またまたマグロの話
 最近よくマグロ漁獲量削減という話題を耳にする。これについて書くと長くなるので中略するが、イタリアで普段私たちが手にとり、口にするマグロは、中にはアフリカあたりでとれたものもあるのだろうが、基本的に全て近海もの。私がよく行くサン・ロレンツォ中央市場のマッシミリーノのところではマルサラ沖で一本釣りした大西洋ホンマグロ「トンノ・ロッソ」が、週末ごとに入荷する。大体40〜50kgぐらい。小さいと思うかもしれぬが、それより大きいマグロはこの市場ではさばききれないのだ。 しかしイタリアの場合ハラカミ一番だろうがスナズリだろうがどの部位も値段は一律。シチリアならば一塊のブロックで売ってるが、フィレンツェでは「●●キロ下さい」というとこのマグロを魚屋さんが、大鉈のような包丁でざっくり筒切りにして売ってくれる。末端価格はキロ18〜22ユーロだから大体2700円〜3300円。赤身から中トロまでまんべんなく味わえてこの値段。しかし自分できちんとさばけないといけません。 この買って来たマグロを極薄のロースト・ナイフですぱり、すぱりとその怖いくらいの切れ味を楽しみつつサク取りし、赤身もトロも2〜3日冷蔵庫で寝かせてから食べる。1キロあれば赤身、中トロあわせて大体刺身が6〜8人前とれる。これをわさび醤油で食べるともう、体にぶるりとふるえが来る。 先日東京の実家の近くにあるスーパーの鮮魚コーナーをのぞいてみると皆メキシコやインドから凍ってやってきた外人マグロばかり。こういうスーパーには大間産のホンマグロなんか回ってくるわけないし、仮にあったとして3000円握りしめてどれだけの近海ホンマグロが買えるというのだろう?そうかと思うと駅前の100円寿司のタイムサービスでは「今から大トロ一皿100円でーす!!」なんてやってる。玉石混淆の極致。大体いい近海ものの生ホンマグロは超高級寿司屋、料亭、高級百貨店がごひいきだから末端にまで流通してこないし、あったとしてもそれこそ目の玉から火が出るような値段がついてる。 P.S.よく「カジキマグロ」という表現を印刷物、ネット、時にレストランのメニュー(変体少女文字風手書き黒板に多し)で見かけますけど、カジキはカジキ科、マグロはサバ科の魚でそれぞれ異母兄弟でも従兄弟でもありません。遠縁ぐらいにはなるのかな?「シチリア風カジキマグロの薫製」などとメニューに書いてあるレストランのメニューは眉につばつけて眺めないといけません。写真はPescheria@CATANIA MASA

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