Davide Scabinの話

Food Design学の先駆者ダヴィデ・スカビン。料理人のポテンシャルを測るキーワードは幾つもあるのだろうが、思考の深さ、知能指数で測るとすれば、私の知る限りおそらくスカビンはイタリアでもトップ1,2,3ぐらいであろう。
スカビンの料理はサイバー・エッグに代表されるように従来の概念を完全に打ち壊し、ゼロのデザインから構築している。ゼロとは無であり、禅である。
彼が作るサラダはすさまじい。15種類とか20種類とかの野菜、ハーブを使用するのだが、その数字は彼にとってさほど重要でない。そうした素材の造形的に美しい部分を立体的でなく、思考なきクリエイティヴが陥りがちな立体的な盛りつけでなく、あくまでも2次元空間内におさめるゼロ幾何学。それぞれ小さな一片しか皿上に乗せないのはミクロ・ポルツィオーネ、つまり最小単位からの出発だからである。
こうしたサラダへの味付けは塩水なのだが、それはもはや個体の最小単位となった野菜に呼応するには液体でなければならないからである。さらにこうしたサラダを食べるのは箸である。それは単なるオリエンタリズム、東洋への憧憬ではなく、西洋人に極限状態の緊張を要求しているのである。そうすることでより、自分が不慣れな箸でつかもうとする食材の形とその本質を見極めることになり、ひいては味覚も最大限にまで高められるから、である。
これをたかがサラダ、といってはいけない。スカビンの世界は高度な知識、つまりIntelligenzaでなくIntellettualitaを要求される。それは従来の頭をつかわないですむような食事と料理にはもはや刺激を求められない人にとっては刺激的で、宗教に似た求心力があるはずだ。MASA
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