Fat Duck事件について
ロンドン郊外の「ファット・ダック」といえばヘストン・ブルメンタール率いる三ツ星レストランで、実験キッチンや分子料理法、i-podで波の音を聞きながら食べたりすることなどで有名ですが、先日のニュースによると、食中毒客が相次ぎ、現在自主的に営業を休止しているとのこと。過去数週間、ファット・ダックで食事した客のうち30人以上が食中毒になったところ、保健所が調査したけれど何も異常は見当たらず、ヘストン・ブルメンタール自ら原因が分かるまで徹底的に調査するためらしい。ところがファット・ダックで食中毒騒ぎが起きるのは今回が初めてではないような。 この件に対し、ミラノのジャーナリスト、パオロ・マルキはこうコメントしています。「有名人が過ちを犯したとき、そうでないものたちは喜ぶもの。分子料理法とはトラットリアの郷土料理より話題になることが多いが、トラットリアでもいいキノコと悪いキノコを選り間違えたりするもの。つまり間違いは料理人の責任によるもので、分子料理か郷土料理か、という料理法の違いからくるものではない」という主旨でした。つまり、出る杭は打たれるというか、この事件をきっかけに分子料理法そのものの存在を否定し、攻撃する風潮が現在のイギリスはじめ、ヨーロッパの食ジャーナリズム界で起きつつあるようです。 一方フランスでは同じ三ツ星で黒い帽子がトレードマークのマルク・ヴェラが閉店することになったそうです。というのもスキー事故以来本人の体調が戻らないためで、体調が良くなった暁には再開する可能性もある、とか。 イタリアではこの世界的な経済危機で5つ星ホテルは無料アメニティ見直しでコスト削減につとめたり、高級レストランはどこも売り上げ減に苦しんでいます。フィレンツェの町中には「Menu anti-crisi」(経済危機対策メニュー)という看板で定食10ユーロとか、耳にするのはあそこがつぶれた、ここもなくなった、という景気の悪い話で、New Openといえば判で押したように居抜きか、単価の安いPizzeria Ristoranteばかり。ますます家メシの需要が高まりつつあるようで、この際だから料理研究に時間を費やしてみようか、と思っているのは私だけではないはず。とはいえ粉末オリーブオイルとか、ブロードのキャビアとか、塩漬け卵のラヴィオリとか特殊な器具と食材を必要とする最先端料理はできそうにないので、ひたすらトラディショナル回帰ですが。 そういえばこの間日本で「ジョエル・ロブションのお家で作るフランス料理」という本を書店でぱらぱら見たけど、ちょっと家で挑戦するには困難度高し。ならば、とイタリア料理バージョンとしてカルロ・クラッコあたりと「お家で出来る簡単クチーナ・クレアティーヴァ」とか作ってみようか。それともジャン・パオロ・ベッローニの「あなたも今夜はカッポン・マーグロ」とか?いやいや、やはりガルガのエリオが作る「クチーナ・エスプレッサ=速攻イタリアン」のほうが一般的にはウケルと思うのだが・・・。南無。MASA

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