Testaroliの謎
こちら先日リグーリア州はポルトヴェネレで買って来たテスタローリでございます。直径約30センチ、真空パックになっていて開封後これをマルタリアーティ状に切って茹でて食す、つまりパスタであります。 トスカーナ州北西部からリグーリア州にかけて見られるこのパスタは乾式加熱したあと湿式加熱するという非常に珍しく、恐らく他に類をみない変わったパスタでその起源は非常に古い、といわれています。本来小麦の粒食から粉食へと人類が進化した際、最初に生まれた粉食が乾式加熱する小麦生地つまりパンですが、それを発酵させるさせないは宗教的解釈に関わってくる問題で、キリスト教においては発酵イコール、キリストの秘跡であり無発酵生地とはキリスト教公認以降はおそらく異教徒的な食物でありました。粉を練って焼いて食す、という点においてパンとパスタの分岐点は発酵という秘跡を行うか否か。つまりキリスト教的であるか否か、でありました。 そうした意味で古代の無発酵パンの形に最も近いのは古代ローマ、アピシウスの料理書にもあるようにラザーニャ、あるいはラーガネと呼ばれるパスタで、生地を竃で乾式加熱したものでした。で、このテスタローリとは水で練った粉を鉄板で焼き、それをさらに茹でて食すという手間のかかるもので、なんでこんなに手間をかけるかというと単純にそのほうが美味しいからなのだろう、としかいえないようです。 ここからは仮説ですが、このテスタローリが乾式加熱から湿式加熱へとパスタが進化する過程における始祖鳥のような存在であるならば、すべてのパスタはある意味テスタローリ前、テスタローリ後、で分類できるような気もします。水を必要とするか否か。 しかしそれより古いエトルリア時代の町、タルクイニアの遺跡には現在のシエナ名物、ピーチを作る道具が描かれているそうです。とするとピーチのほうがその起源は古いのかなぁ、などと考えだすと夜も眠れません。ちなみにこのテスタローリ、食感はせんべい汁のようでした。ついでに作ったこの日の料理はInsalata di Finocchio e clementino、Crostini con acciughe e burro、Crema di piselli e pancetta、Cima di rapa saltata、Testaroli con pesto genovese fatto da qualcuno altro。MASA

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