Beccaio@Firenze
ビステッカを5種類の肉から選べるというミートイーターにとっての聖地「Beccaio」。前回訪店時は女子二人に肝臓をいたわる男子一人という組み合わせだったのと、前菜でちょっと飛ばしすぎたので肝心のビステッカを前にしてすでに満腹中枢がアラームを鳴り響かせるという失態を犯してしまったので、今回リベンジ訪問となりました。男子3名を確保し、うち1名は数々の大食いメニューに挑戦してきた逸話で一晩でも二晩でも語り続けられるK君。職業はもちろん料理人であります。 メニューは前菜、プリモ、ビステッカ、肉料理、コントルノの項目に分かれ、プリモの数品とコントルノを除けばほぼ100%肉ベース。どれにしようかを目を走らせるもなかなか視線が定まりません。しかし、前回の教訓に従うなら、まずはビステッカを決めるべきです。 ここでは焼き加減から肉を選ぶ方法がとられています。non al sangue (レアではない)ならデンマーク産フリソナ、cottura media(ミディアム)ならピエモンテ産ガロネーゼ、al sangue(レア)ならイタリア産リムーザンかキアニーナかあるいはアイルランドのアンガス、といった具合です。我々は味の違いを比べてみたかったので、とりあえず2種類を選ぶことにしました。カメリエーラによれば、tenera(淡白)なのはフリソナとリムーザン、saporita(しっかり味)がガロネーゼ、キアニーナ、アンガスということらしいので、フリソナとガロネーゼを頼もうとしたら前者は「まだ準備ができていない」というのです。熟成がまだ、ということでしょうか。とにかく代わりにリムーザンにしてみました。ここではさらに、フィレなしフィレありの指示ができるので、リムーザンはなし、ガロネーゼはありで注文。 前菜はごく軽く、鶏のテリーヌと自家製ソプラッサータにとどめ、プリモはパス、万全の態勢でビステッカを待ち受けます。先に来たpatate casentinoのローストをつまみながら待つこと数分、ビステッカ2種がのったまな板がワゴンで横付けにされました。白い皿に取り分けると、肉の色、筋の走り具合の違いがよくわかります。リムーザンは肉質均一で色薄く、一方ガロネーゼは筋目際立ち赤みが強い。食べればさらにその印象が裏付けられ、特にガロネーゼの濃厚な血の味はいわく言いがたい力強さで味覚を圧倒し脳髄を直撃します。食べ比べるのって楽しいと思った瞬間でした。 フードファイターK君が骨に残留する肉をせせろうと皿に取りましたが、「あれ?全然残ってないや。凄いな、切り慣れてるよ」。残ったものを持ち帰ることに抵抗を感じるイタリア人の前では普通やらないのですが、知り合いの店では残してしまったビステッカや骨も包んでもらいます。骨からこそげ取った肉は佃煮にしたり、牛丼にすると絶品なんです。店によっては骨からまだまだ大きな肉切れをこそげることもできるので、残して帰るなんてもったいない。でも、ここではそんなことに執着しなくてすみます。そこで全部食べちゃえばいいんですから。 お勘定はなぜか1割負けてくれてぴったり200ユーロ。4人で割り勘することを見抜かれていました。初訪問の時も割引してくれましたが、これはもしかしてリピーター養成作戦かもしれませんね。もうちょっと近いところにあればまんまと引っかかるところです。 お店のデータなどは今発売中の「料理通信」3月号のワールドトピックスで紹介されていますので、どうぞご参照ください。mnmSAPORITAをもっと見る
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