長崎にて・その2
かなり話は前後しますが、先日長崎を訪れた時の続きです。今回泊まったのはグラバー園の脇にある全日空ホテル。部屋の窓からかすかに海が見えましたが福岡の全日空ホテルに比べると★がひとつ減ったようなよくいえば気さくな感じの宿でした。近所にはかすてらの福紗屋や老舗中華料理店四海楼、さらには市電乗り場にも近く、市内観光には足の便がよいところです。でこのホテル脇、グラバー園へと続く坂道は土産物屋がだーっと並んでいるイタリアでいえばオストゥーニの旧市街?にどこか似た雰囲気。その一軒にだらりと入り、3切れ150円のカラスミ(魚卵はオーストラリア産)をつまみにドイツ風ヴァイツェン地ビール「長崎の志士」でさらにだらりと昼前のアペリティーヴォをいたしました。 その後グラバー園に向かいましたが、同園の詳しい説明は略。イタリア大使館より寄贈されたプッチーニ像が立つ園内には西洋料理発祥の地「旧自由亭」があったということで、同園内グラバー邸内には150年前の西洋料理を再現したダイニングルームがありました。150年前と言えばイタリア統一とほぼ同時期、イタリア料理の古典でいえば鶏のマレンゴ風とか、コトレッタ・アッラ・ミラネーゼとかが生まれた時期に近く、温故知新のイタリア料理の残滓を求めんと卓上に盛られた料理サンプルを端から端までなめるように眺めてみましたが、その料理とはこのようなものでした。(原文ママ) 1ブラートエンゲホーゲル(鴨の丸煮) 2ハルトベースト(鹿の股の丸焼き、からし酢かけ) 3カルマナーチ(豚の塩胡椒摺り込み焼き) 4ケレヒトソップ(えびがね=伊勢海老、のスープ) 5ロストルヒス(浜塩焼き鯛) 6コテレット(鶏・胡椒・肉豆冠の花=ナツメグ・葱の紅毛紙包み焼き) 7ラーグー(鶏・椎茸・葱の煮込み) 8スペナーン(ホウレン草をみじん切りにし、ボートル=バターで揚げ、四つ切り卵をつける) 9スートアップル(リンゴの赤ワイン煮) 10ポーフルチス(窪んだフライパンで焼いたパンケーキ) 11スペレッツ(卵と小麦粉を水で練りまぜ打ち伸ばして縄のようにねじり油で揚げたお菓子) 12タルタ(野菜=かぼちゃ、人参等のタルト) なんとなく全体いわゆるドイツ・オーストリア(あるいはオランダ?)風のミッテル・エウローパ料理ですが、イタリア料理好きなら目が釘付けになるのは6のコテレットと7のラーグーでしょう。しかし現在私たちの知る「コトレッタ」「ラグー」とは似ても似つかなそうなその姿。ともになぜか鶏料理だし葱やら椎茸やらが使われていてやけに東洋風な解釈。なんとかその理由を知りたいものですが、こんな昔風「コテレット」「ラーグー」が今も食べられる長崎の老舗料理店をご存知の方、是非ご教授賜りたく存じます。 そんなことを考えながら昼食は長崎名物トルコライス。これはピラフ+トンカツ+スパゲッティナポリタンがついた、いわば大人のお子様ランチ。その名のいわれはいわくポルトガルでも3を表す「トリ」から来たとか、その折衷料理を評して東洋と西洋の中間に位置するトルコの名をいただいたとか、諸説紛々。なんとなく昔の喫茶店のランチを彷彿とさせるコシの無い国産スパゲッティと薄切り豚肉のカツレツがやけにせつない、サントリー白角ハイボールに(昼から)よく合いました。MASA

SAPORITAをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。