週間食卓日記(ラーメン騒動の巻)@Firenze
11月某日 トスカーナ北部のミネラル・ウォーター・メーカー、Acqua Pannaを訪問。ちょっと高価な水につき普段おつきあいはないけれど、あらためて飲むと柔らかくて滑らかで、値段だけのことはあります。面白かったのは、この水を入れていたグラスを一度空けて水気を切ったところにワインを注ぐと、乾いたグラスに注いだ同じワインよりも断然香りが立ち上がったこと。ワインが解放されたような感じがしました。 ランチは、メディチ家の狩の館だったVilla Acqua Pannaにて、ピエンツァのペコリーノに樹木の香りのするはちみつmiele melata、ベシャメルを使わないラザーニャ、細切りじゃがいもをオリーブオイルでかりかりに焼き固めたtorta di patateなど。 夜は深夜営業のピッツェリアRotonda初訪問。トマトソースにケイパーとアンチョビのpizza Napoli、生ハム、ラディッキオとスカモルツァとスペックをさっと焙ったもの。 11月某日 街中で職人を訪ねて工房巡り。昼前にミケランジェロ広場に行ったので、その流れで昼食はOsteria San Niccolo。ランチはプリモ(5ユーロ)とセコンド(7ユーロ)をセットにすれば10ユーロでお得。でも、そんなに食べられないかも、とハンバーグ(イモフライ付き)をセレクト。味付けは塩も含めてほとんどなされていないので、添えられたケチャップ、マヨネーズ、マスタードによるアレンジは必須。同席のかたがたは、セットの安さについ引かれてプリモ&セコンドでしたが、量が多いとギブアップ気味。ズッキーニ入りペストジェノヴェーゼのフジッリ、アマトリチャーナのセーダノ(細めのリガトーニ)、モツ入りのパンコットの後、ローストビーフやアリスタ。 夜はVinaino。Sott’oli della Nonna、spaghetti alla Carrettiera、melanzana alla parmigiana、tagliata con rucola e aceto balsamico、insalata mistaをできたものから持ってきてもらってつつくスタイル。 11月某日 フィレンツェ郊外の工場街取材につき、昼は界隈のマクドナルド、約10年ぶりです。迷った末にマックチキンを選択。鶏には胡椒が効いていましたが、バンズは甘いですね。トイレにエアータオルがあったのに衝撃。イタリアで見たのは2度目です。1度目はドロミテの山小屋でした。 夜はプラート門のBaldini。crostini toscaniの後、昨晩と比べるのだという同席者の希望でspaghetti alla Carrettiera、そしてrisotto ai funghi。Vinainoに比べるとにんにくはごく控えめで、トマトソースはシンプルで素直、同席者によれば「日本にもありそうで安心できる味」。でも、軍配はVinainoに上がりました。好評だったのは、きのこのリゾット。米の煮上がり具合がよろしい、と。セコンドはmilanese con carciofi fritti、agnello rosolato con patate、insalata mista。 11月某日 取材がおして昼食はヌキ。夜は非常に久しぶりにAntico Ristro Cambi。奥の大ホールに通されて、mozzarella e pomodoro、tagliatelle al cinghiale、tagliolini al tartufo nero、pollo fritto con carciofi fritti、そして「フィレンツェなんだから一度は食べないと」という同席者の半ば義務的な希望でビステッカ。モッツァレッラは鮮度に欠け、イノシシのラグーは淡白すぎ、黒トリュフは乾いていて、かなり残念な展開でしたが、ビステッカと鶏から揚げはどちらも美味しく、終わりよければすべて良し。と思ったのですが、カメリエーラのサービスがてんでダメで...。まず、目を合わせようとしません。ようやくアイコンタクトのとれたカメリエーラに頼もうとすると「このテーブルの担当に言って」とすげなく返されます。たとえ担当違いでも、カメリエーレ同士でやり取りすればよく、お客にそれを押し付けるのはいかがなものかと。レジに陣取っているオーナーもお金勘定に余念がないようで、あぁこの店は間違った方向へ走っているなぁと実感した次第でした。 11月某日 額縁職人に飛び込み取材。丸い額縁が印象的なミケランジェロの「聖家族」の実物大複製を前に額縁職人、語る語る。曰く、職人とは人間性を表現する仕事に就く者である云々。堅固な矜持に支えられた揺るぎなさに圧倒されたところで、昼食は同行者の希望でラーメン屋へ...。しかし、平日の昼営業はしないことが発覚、Vinainoにて「ラーメン感覚で食べられるspaghetti alla carrettieraを」となりました。しかし、本日はカルチョーフィのリゾットがあるというので方向転換。たっぷりのアーティチョークが肝臓を癒してくれました。 11月某日 午前中は、フィレンツェ郊外の教会ロケ。クロアチア出身の神父様はとても親切で、最後には教会オリジナルキーホルダーをくださいました。こんなこと、初めてです。 昼食は急ぎフィレンツェに戻り、土曜日だけはランチ営業をしているVia de’ Banchiのラーメン屋へ。ところが、「本日ランチ分は終了いたしました」と告げられてしまい、同行者の絶望っぷりといったらありませんでした。立ち直れぬ人を鼓舞しつつ、しかし遠距離移動はすでに困難な状態だったのですぐ近くのピッツェリアDantescaへ。フィレンツェでも数少ない正統派ナポリピッツァです。サルシッチャとフリアリエッリ、プロヴォローネのピッツァを堪能。 夕食は、同行者悲願のラーメン屋へ、開店直後に入店。しかし、すでにかなり席は埋まっています。同行者たちがラーメンを注文するなか、へそ曲がりにも私は焼きメシを頼みました。カメリエーレは日本のかたが2人、大車輪で頑張っていますが、動きは残念ながら速やかではありません。ラーメンの到着もばらばらです。それはまだしも、私が頼んだ焼きメシはなかなか現れず、一方で同席者のセットで頼んだ小焼きメシはラーメン前にとっくに食べ終わっているという次第。途中からサービスに加わったイタリア人男性に「焼きメシはくるのだろうか?」と尋ねると、「speriamo(だといいですね)」。あまりの返答にしばし呆然。「どういうこと?」と再び問えば、「言葉どおりです。この店は私の店ですが、この時間帯、私はオーナーじゃないから」。フィレンツェ人は変わっていると常々思いますが、ここまでとは思っていませんでした。結論として、自主的には二度と行くことはないでしょう。蛇足ながら付け加えると、焼きメシは結局現れなかったので店を出、Bar San Carloのハッピーアワーで気分転換を図りました。 11月某日 氷雨のなか、第27回フィレンツェマラソン開催。沿道で応援する人もほとんどなく、ランナーは黙々と走っています。それを横目に、時折、コースを横切りながら雨下散歩。「暗いマラソンだなぁ」と同行者。走っている姿は修行僧にも見えます。昼食は、Il Magazzino。一年以上ぶりでしょうか。日曜だからか、イタリア人のグループ客が多いですね。まずは、coccoliとサラミの盛り合わせ。揚げたての塩味のきいたcoccoliが食欲を呼び覚まします。しかし、食べ過ぎ禁物の筆頭格。幸い一人一つだったのでその後のペース配分に影響は出ませんでした。プリモはtagliatelle al ragu biancoとlinguine al pesto di cavolo nero。リングイネではなくどうみてもスパゲッティーニでしたが、どちらもしっかりとした、どちらかというと濃いめの味でワインが進みます。日曜日だからとワインはどんどん空きますが、年齢的に食べる量はさほどいけず、セコンドはtrippa alla fiorentinaとサラダの大盛りで終了。健康なんだか不健康なんだかよくわからない雨の日曜ランチでした。mnm

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