肉屋のおかみのTagliata
1月某日、フィレンツェ郊外某所で料理撮影。肉屋のおかみさんによる本日のお題目は「タリアータ」です。タリアータ、というのは本来「カット」というイタリア語ですが、料理としては平たくいえば牛ステーキ、もしくはフランス風にいうならロベスピエール。私の敬愛するミラノのフード・ジャーナリスト、アントニオ・ピッチナルディAntonio Piccinardi氏の名著「Dizionario di Gastronomia(1993年Rizzoli)」によればタリアータとは「近年、レストランから導入された言葉であり、牛ロース肉をグリル、もしくはフライパンでソテーし薄切り。肉汁もしくはサルサとともにサーブされる料理。別名「Robespierre」これはギロチンによる首切りにかけている。」とあります。ちなみにロベスピエールというのはフランス革命期の政治家でジャコバン派のリーダー。反対派をばんばんとギロチン台に送ったことで有名です。18世紀〜19世紀にかけて政治、戦争などに由来するイタリア料理は幾つかありますがこの呼び名もそのひとつ。正確にはTボーンの骨を外したコントロフィレット側、ビステッカ・ディゾッサータをよく熱したグリルパンで両面しっかりグリル。あらかじめローズマリー、セージ、ニンニクで香りづけしたオイルを満たしたフライパンに移し、しばらく加熱。中がロゼ色ぐらいのところで火から下しすぐに薄切りしてフライパンのソースをかけてサーブ。好みでルッコラ、カルチョーフィ、ポルチーニ、あるいはオーヴォリなどをトッピングします。おかみいわくローストビーフと違い、肉を加熱後休ませずにすぐに切って出すところがポイント。ルッコラは苦みが強く意外と苦手なイタリア人も多いので、イタリア人なら誰でも好きなカルチョーフィを使うことのほうが多いとか。本日のタリアータの厚さはスリーフィンガー、8cm。確かに調理後すぐに切って皿に盛っても美しいできばえ。この料理哲学から見ると「血の滴るようなレアステーキ」という表現は調理の失敗を暗示しているようであります。時折イタリアのトラットリアで食事、あるいは撮影していると血まみれのタリアータが出てきて閉口することもままあります。MASASAPORITAをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。