はかなきものと根強いもの
昨年後半はなんだかいろいろとあって心のゆとりが失われており、何かをためつすがめつするという時間もなく過ぎてしまいました。これではいかん、と態勢を建て直そうとしたところへ、ひょっこり現れるものなんですね、「これ、絶対ほしい」もの。何がどこに潜んでいるかわからない初めての場所でも、呼んでいる声が聞こえてくるのです。聞こえたらもう終わり。危ない...と思っても後の祭りです。散財コースまっしぐら。 18世紀末の頃と思われる吹きガラスのコップ。いびつだし、底裏の処理も施されていない。売り物にならず捨てられたものでしょう。でも、こんな薄いはかないものが生き延びていたというその運の良さ、是非あやかりたい。 路地裏の店先で寒風に吹きさらされていたお菓子の焼き型。店仕舞のときにしばしば放出されるものなので、そう珍しいものではないのですが、しかし「これぞ」と思うものに出会うことはなかなかありません。使い込まれてお役御免になって、古道具屋に引き取られて。でも、まだまだ生きてるよ、という声がしたような。

SAPORITAをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。