マエストロ・マルケージの新たなるプロジェクト
ヌオヴァ・クチーナ・イタリアーナの父、グアルティエロ・マルケージは、80歳を超えてなお精力的に活動を続けている。ただし、料理人としてではなく、若い世代を牽引するマエストロとして、そして、イタリア料理の一時代を築いた生きたアイコンとしてである。料理人の枠を超え、すでに一つのキャラクターと化しているが、それはイタリア人の自己プロデュースの巧さを示しているとも言える。 2004年にALMA(パルマ郊外コロルノにある国際イタリア料理学校)の立ち上げに関わり、2010年には80歳の誕生日を記念してグアルティエロ・マルケージ財団を設立、そして、2014年の今年、来るミラノ・エキスポに向けてさらにアカデミアをミラノの、マルケージがその名を知られることとなった原点のリストランテがあった場所のすぐ近くに開校するというのである。 アカデミアはロンバルディア州政府、文部省の協賛を得て、運営委員には著名な音楽家、建築家、哲学者、彫刻家、画家、写真家、舞台監督、そしてエキスポ2015の芸術監督までもが参加する。料理学校なのに門外漢が?と思うが、既存の料理学校にはない発想と教育方法を用いた実験的な教育機関であるらしく、ALMAの付属学校として9月から開校するという。対象は大きく2つあり、まずは子供、そして若い料理人。子供は、食べること料理することだけでなく、音楽や彫刻、絵画や建築など“精神の栄養”を通して、命の糧について総括的に学ぶことを目的とし、若い料理人には、基本的な知識と技術は身につけていることを前提に、料理の感覚をさらに磨くためにさまざまなアプローチが与えられるという。 実際の授業については現時点ではわからないが、掲げる理念の素晴らしさ、そして、州や国を巻き込んで異業種のブレーンも投入するあたり、さすがだと感じる。羊頭狗肉に終わるかもしれないが、まずはやってみることが肝心で、その結果が良いにしろ悪いにしろ、次への素材となるのである。そして、いつも思うのだが、イタリアはそういうトップレベルでの活動と同じくらい、民間レベル、そして友人同士の団結活動も盛んで、さらには職人がこつこつと単独で技術を磨き、物を作り出している。いろんな人がさまざまな分野でユニットの大小もとりどりに活動する、そういう多様性がこの国を引っぱっているのだと思う。

SAPORITAをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。