ビスコッティの新星ビナーシェ誕生

いまやフィレンツェの名店として名高いトラットリアBuca dell’Orafo(ブカデッロラフォ)。ここ十年この店の厨房を飾ってきた料理人にFerragosto@須賀川の岩崎里美嬢や、現在フィレンツェで最も脂が乗っている日本人料理人、枝澤竜太くんがいるが、それよりもさらに以前、わたしの知る限りBuca dell’Orafo最初の日本人料理人に山本慎弥くんがいた。山本くんはBuca dell’OrafoのあとBologna郊外のAmerigoなどで研鑽を積み、日本に戻ってからはや10年あまりの月日が流れたが、その山本くんの日本での新たなる挑戦がトスカーナを代表する味であるビスコッティの通信販売である。

 

店名のBinasce(ビナーシェ)とは彼の造語で、フィレンツェから始まったルネサンス、Rinascimentoの語源であるRinasce=生まれ変わる、を連想させるが3.11を期に仕事、家族をふくめあらゆる思考の変換を迫られたという山本くんにとってRinasceとは一度マイナス点におちこみ、そこからの再出発を連想させた。そこで新しい事業にはマイナスからの再生ではなく二度目の生を授与する、という思いを込めた「二度生まれる」という意味でBi nasceという言葉を思いついたという。確かに暗黒の中世あってのルネサンス、悲劇あっての再生、という図式は歴史の長大な流れから見れば当たり前の表現なのかもしれないが、震災を目の当たりにし、己の無力感を知った山本くんふくむ現在のわれわれの世代にはあまりにも苦痛を伴う言葉なのかもしれない。

 

料理人もサービスも経験した山本くんが作るビスコッティの原点はやはりフィレンツェ時代にさかのぼる。例のBuca dell’Orafoでの修行を終えた後、市内のパン屋でパン作りと同時にビスコッティ作りを40日間かけて学んだ。そうした下積みが現在Binasceから山本流のビスコッティとなって誕生した。現在は作っているのはアーモンド(Mandorla)、チョコレート(Cioccolata)、アーモンド&チョコレート(Mand & Ciocco)、イチジクとクルミ(Fichi e noci)の4種類で受注製造のみ。先日山本くんから届いた4種類のビスコッティをフィレンツェまで大事に持ち帰り、ひとつひとつ味わう楽しみはまた格別。フィレンツェで生まれ、日本で二度目の生をとげた山本くんのビスコッティを再びルネサンスの地フィレンツェに持ち帰る、という行為は実は特別な感傷を伴う。これは是非ブカに持っていってスタッフ一同味わってもらわねば、と思いついたのだがその思いつきを実行に移すのは早ければ今週中。味にうるさいイタリア人たちがどういうのか?その結果はまた追って報告したい。

Binsce(ビナーシェ)  Tel&Fax047-7102873 注文、お問い合わせは電話かメールで。

binasce@aurora.ocn.ne.jp   http://fb.com/binasce

9袋入り(3種、3袋ずつ) 800円

20袋入り(2種、10袋ずつ)1700円

30袋入り(3種、10袋ずつ)2500円