フィレンツェ美食散歩14 カーサ・デル・ヴィーノ
虎穴に入らずんば虎児を得ず。ちょっと大袈裟かもしれないが、ひとことで表すとこうなる。 そんなに恐ろしいところなのか?というと、否定はできない。大体、狭いうえに昼時には多くのお客が立ったまま黙々とパニーノを頬張っているのだから、一見さんはちょっと入りづらい。でも、意を決して飛び込めば、きっとそれなりの成果を得られる。たかがパニーノというなかれ、どうしてこうして奥が深いということを体感できるはずだ。 中央市場を正面にして右側、サン・ロレンツォ地区のど真ん中にある小さなバールのような「カーサ・デル・ヴィーノ」。ワインの家というだけあって、壁の棚にはイタリア各地のワインがずらりと並ぶ。店の始まりははっきりとはわからないが、一八八〇年代にフィレインツェが統一イタリア王国の首都だった一時期に誕生したらしい。主はジャンニ・ミリオリーニ、寡黙でほとんど無表情ときてるからとっつきは良くないけれど、前店主だった亡き父親も同様だったので、おそらくそういう家系なのだろう。でも、話しかけるときちんと答えるし、第一、恐いだけの店ならこれほどお客が集まるはずがない。 彼らの目当ては、ワインはもちろんだが、なんといっても組み合わせ無限のパニーノ・ス・ミズーラ(オーダーメイド)。大理石のカウンターの奥のガラスケースに並ぶ多種多様な食材の中からあれとこれと...と選び、好みのパンに挟んでもらう。中身によっては「温めるか?」と聞いてくれるので、そこは素直に従う。主役となる素材は決めたけれど、そのほかに何を合わせたら?と迷う時は、ジャンニにアドバイスを乞う。また、長年の経験から生まれたジャンニ特製仕込み済みの具なら、ビギナーでも楽に順列組み合わせの高いハードルが超えられる。完成したパニーノを手に、グラスワインを選んだら準備完了。いざ、めくるめくパニーノ・ワールドへ! Trippa cotta, pomodorini e cipolla トリッパ・コッタ、ポモドリーニ・エ・チポッラ ゆでたトリッパに、ミニトマトとタマネギ、さらに隠し味でにんにく、イタリアンパセリ、ケイパー、アンチョビが加わっている。夏におすすめのさっぱりした味。3ユーロ Filettine di acciughe e pecorino fresco フィレッティーネ・ディ・アッチューゲ・エ・ペコリーノ・フレスコ みじんぎりのイタリアンパセリとにんにくでマリネしたオイル漬けアンチョビとまだほとんど熟成の進んでいないフレッシュなペコリーノチーズ。定番的組み合わせ。3.50ユーロ Pomodorini, capperi, acciughe, peperoncino e burrata ケイパー、アンチョビ、唐辛子でマリネしたミニトマトはジャンニ特製オリジナル。中に生クリームが入ったモッツァレッラ、ブラータを合わせる。3.20ユーロ Frattaglino e Fontina al salsa verde フラッタッリーノ・エ・フォンティーナ・アル・サルサ・ヴェルデ 豚の頬肉、舌、鼻面、乳房、軟骨といったモツをにんにく、イタリアンパセリ、酢で湿らせたパン粉、ゆで卵、ケイパー、アンチョビでマリネ。チーズと一緒に温めて。3ユーロ Prosciutto arrosto e insalatina プロシュート・アロスト・エ・インサラティーナ 生ではなく、ローストしたプロシュートは、生ハムの影に隠れて馴染みが薄いが、パニーノにするとその旨味が一段と引き立つ。あっさり生野菜とも好相性。3ユーロ Carciofi e sgombro sottolio カルチョーフィ・エ・ズゴンブロ・ソットーリオ これもジャンニ特製オリジナルの、オイル漬けアーティチョークとサバ。サバ特有の臭みもなく、酸味の効いたアーティチョークとはなかなかのコンビネーション。3.50ユーロ Salsiccia e Stracchino サルシッチャ・エ・ストラッキーノ 生ソーセージとクリーミーで酸味のあるストラッキーノチーズはトスカーナ伝統の組み合わせ。軽く焙ったところへ、ジャンニはバルサミコ酢を垂らす。3.20ユーロVia dell’Ariento, 16r Firenze 055-215609 9:30~16:30 日曜 6~9月は土曜も www.casadelvino.it
SAPORITAをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。