フィレンツェ美食散歩25 ポッジョ・スカレッテ
キャンティにはそれこそ無数のワイナリーがある。広大な畑を持ち、手広く営むワイナリーもあるけれど、訪ねていくなら小規模で家族経営的なところがいい。そのほうが、造り手のワインへの思い入れが直に感じられるからだ。グレーヴェ・イン・キャンティの町を通り過ぎ、未舗装の急な坂道を行く。ワイナリーは大抵僻地にあるから車でないとたどり着けないし、その道はかなり険しい。訪れたのは「ポッジョ・スカレッテ」、丘の中腹に15haの畑を持つごく小規模なワイナリーだ。主は1970年代にイタリアエノロゴ協会のディレクターを務め、その後も醸造家として多くのワイナリーを助成し、トスカーナのワインの品質向上に貢献した伝説の人物、ヴィットリオ・フィオーレ。自らのワイナリー「ポッジョ・スカレッテ」を立ち上げたのは1992年、満を持してのワイン造りは長年の経験を活かした手作業が命である。 十月の半ば、好天が続いたお陰で収穫はほぼ最終段階を迎えていた。一房ずつ手で摘み、籠がいっぱいになるとトラクターで醸造庫へと運ぶ。ヴィットリオの息子のユーリが重さを量り、圧搾機にかける。絞り汁は醸造タンクに移され、発酵を始める。大量の二酸化炭素が発生する危険な作業だから気を抜けない。ユーリとスタッフは連日の作業で疲労はピークに達しているようだが、表情は明るい。収穫の喜びは古今東西同じだ。ワイン造りは醸造後の一瞬を除いて休まるときがない。一年をかけて丹誠するワインのその一場面を見るだけで、ワインへの思いはさらに深くなるだろう。
Via Barbiano,7 Ruffoli, Greve in Chianti(Firenze)
055-8546108
www.poggioscalette.it
www.fiorewines.com
訪問は要予約。

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