ミラノのベジタリアン・ナイト RATANÀ@MILANO
3月のある日のこと、わたしが敬愛するミラノのジャーナリスト、パオロ・マルキが主宰するIdentita Golose イデンティタ・ゴローゼより案内が届いた。ミラノのリストランテ「ラタナ Ratanà」にて3人のシェフによるベジタリアン・ナイトをおこなうという。御大自らの召集令状を断るわけにはいかない、と一食のためにミラノに出掛けたのである。 会場となった「ラタナ」は再開発が進むガリバルディ駅北側にある。広大な市営公園や劇場を建設中の同エリアにおいて、夜とも鳴れば周囲は真っ暗な闇の中、ぽつんと一件だけ浮かぶように佇む古い洋館が「ラタナ」だ。 この日登場する3シェフとメニューは以下の通り。アリーチェ・デルクールトゥ Alice Delcourt@エルバ・ブルスカ Erba Brusca。ミラノ郊外で自家菜園の野菜料理で名高い同店の女性シェフだ。チェーザレ・バッティスティ Cesare Battisti@ラタナ Ratanà、旧イタリア国鉄敷地内に立つ一軒家レンストランでは市営公園建設に伴い、自家菜園を計画中だという。もうひとりラタナのドルチェ担当、ルカ・デ・サンティ Luca De Santi@ラタナ Ratanà、以上3人による前菜からドルチェまで野菜尽くしのメニュー構成だった。前菜 Benvenuto con piccoli finger vegetali / Mondighili, crema di ceci e yogurt, Croccante di mais e zafferano etc… ベジタリアン・フィンガーフード/モンデギーリ、ヒヨコ豆とヨーグルトのクレーマ、サフランとトウモロコシのクロッカンテ Variazione di Cavolofiore — Alice Delcourt カリフラワーのバリエーション — アリーチェ・デルクールトゥ Cipolla sotto fieno e carbone, liquilizia, aceto tradizionale e croccante di pomodorini — Cesare Battisti 牧草と炭で焼いたタマネギ、リコリス、アチェート・トラディツィオナーレ、ポモドリーニのクロッカンテ — チェーザレ・バッティスティ プリモ Risotto primaverile, Asparagi freschi e concentrati, limoni sotto sale e viole — Cesare Battisti 春のリゾット、フレッシュ・アスパラガス、塩レモンとスミレ — チェーザレ・バッティスティ Tarte tatin alle verdure, salsa yogurt, erbe aromatiche — Alice Delcourt 野菜のタルト・タタン、ヨーグルト・ソース、アロマティック・ハーブ — アリーチェ・デルクールトゥ ドルチェ Arancia, Carota e Limone— Luca De Santi オレンジ、ニンジン、レモン — ルカ・デ・サンティまずは立ち飲みで食前酒を飲みつつ挨拶がわりのフィンガーフードをつまむ。やがて定刻の20時が過ぎる頃、レストランもほぼ満席になる。この辺りはさすがミラノらしい時間感覚といおうか、フィレンツェならばおそらく20時15分、ローマなら20時半、ナポリなら21時ぐらいであにと人が集まらないところ、20時過ぎに登場した御大パオロ・マルキと挨拶を交わし、まずはカリフラワーのバリエーションで定刻通りに会は始まる。 まずはカリフラワーの前菜。カルパッチョ、グリル、マリネと一つの食材を3種の調理法で楽しませるのはエルバ・ブルスカ、アリーチェの真骨頂。続くチェーザレのタマネギ料理は、安価な食材で満足させるD.O.ダヴィデ・オルダーニの手法を思い起こさせたが、1人タマネギ1つはちょっと量が多過ぎた。続くリゾットも担当はチェーザレ、アスパラガスの皮でブロードをとり、上品なリゾットに仕上げたが、これは想定内の料理というかサプライズは特に無く、しかもマンテカーレが激し過ぎたのか、表面のでんぷんが溶け出している割に芯は固すぎる、いわばべちゃっとした食感でアンバランスなできばえ。そして何よりもやはり量が多過ぎ、この時点でフォークを途中で置くご婦人方続出。続くアリーチェのメイン、野菜のタルトタタン。カボチャ、ニンジン、ビーツで作った甘くてしょっぱいコントラストは、サービスの温度が高過ぎたものの味蕾に再び喝を入れてくれた。しかしこの料理も感触したのはほんの一握り。 そして本日のハイライトがラタナのパスティッチエレ、ルカによるオレンジ、ニンジン、レモンのデザート、これがまた非常に凝った構成だった。まずはニンジンとレモンのジュースにウォッカを入れたカクテルを一口飲み、水分を抜いたニンジン、レモンとオレンジのジュレ、ニンジンのピューレなどなど食感と温度、構成、テクスチャーを変えつつも野菜と果物のみで一皿にまとめた執念とテクニックには脱帽で、この夜のハイライト 。イタリアではテーマ・ディナー「チェーナ・テマティカ Cena Tematica」が盛んだがなによりもその中心であり、最先端はやはりミラノであると実感させてくれた夜、以上全てワイン付きで1人€60。通常の「ラタナ」はもちろんベジタリアン・メニューではないので機会と興味があれば是非。
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