イタリアの手仕事、女編みの籠
イタリアの手仕事というと、革細工、木工、金銀細工、刺繍、レース編みなどさまざまあるが、そのなかでも最も庶民的なのは籠編みではないだろうか。陶器というものもあるが、南イタリアの素朴な暮らしの道具的雑器からファエンツァの美術館に所蔵されているような繊細で高貴なオーナメント的陶器までバリエーションは幅広い。一方、籠はあくまでも生活のなかで使われるためのもので、特に農家(漁師)の伝統的手仕事である。主に南イタリアやサルデーニャで見かけることが多い。 素材は、生活圏の野山や湿原に生えている葦やい草(giunco)、オリーブ(ulivo)、栗(castagno)など。オリーブは小枝をそのまま、栗は薄く削いで使う。水に浸けて柔らかくしてから編むのだが、それでも結構かたくて女性には少々きつい仕事で、多くは男の仕事となっている。時たま、比較的柔らかい素材やしなやかな小枝を使って編んでいる女性に出会うことがある。男性が作る丈夫だが無骨な籠とは違って、彼女たちの手から生まれるのはどこか優しい雰囲気の籠だ。 写真の籠は、オリーブ、ハナミズキ(sanguinello)、楡(olmo)で編んだもの。そのほか、柳(salice)、イボタノキ(ligustro)、コリヤナギ(vetrice)なども使うという。平たい籠はかつて、中にカナパ(麻布)を敷いて粉をふり、パン生地を入れて成形発酵させたとか。手つきの籠は大きなものもあるが、売れるのは小さなサイズ。少しずつ買い集めて眺めていたい、そんな気持ちを誘う女籠である。  

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