イタリアのトップシェフが見つめる和牛 WAGYUの可能性
昨年のミラノ万博以来、イタリア料理界においても日本食材を目にする機会が徐々に増えて来ている。レストランのメニューを見ても「DASHI(出汁)」「UMAMI(旨味)」「SHIZO(紫蘇)」という表現は頻繁に見られるし、日本で口にした料理や食材を積極的に取り入れるようになった料理人も多い。「ベルトン」のアンドレア・ベルトンや「TOKUYOSHI」の徳吉洋二は別添えの和風ブロード(出汁)を飲みながら、あるいはパスタにかけて食べる新しい形のパスタ・イン・ブロードを提案しているし、ミラノの「ザザ・ラーメン」「ラーメン・カーサ」あるいはフィレンツェの「コト・ラーメン」などイタリア各地でラーメン・ブームも始まっている。 今年は日伊国交樹立150周年ということもあり日本食材のイタリアへの進出はますます加速しつつあるが、現在トップシェフたちが注目するのが「WAGYU(和牛)」の可能性だ。去る6月17日から一週間ローマ、ミラノ、フィレンツェのレストラン計16店で和牛をテーマにした「日本レストラン・ウイーク」が行われたが、これは農水省が各レストランに和牛肉10キロを提供し、各シェフに和牛料理を創作してもらうというもの。ミラノからは上記の「ベルトン」「TOKUYOSHI」はじめ「サドレル」「エッセンツァ」などが参加しフィレンツェでは「イル・パラージョ」「コンヌービオ」「グルドゥル」など合計16店が和牛をテーマにメニュー開発に取り組んだ。まさに日伊合作料理を具現化した興味深い料理イベントであった。 普段から和牛メニューをオンリストしているのが、フォーシーズンズ・ホテル・フィレンツェのメイン・ダイニング「イル・パラージョ」だ。シェフ、ヴィート・モッリーカは「和牛はその溶けるような脂が特徴的なので調理はごくごくシンプルに。いわゆるタリアータで醤油を隠し味にしています」といい、日本を良く知るアメリカ人客を中心に大好評だったという。 「コンヌービオ」の女性シェフ、ベアトリーチェ・セゴーニは3種類のソースで食べる「シャブ・シャブ・エスターテ(夏のしゃぶしゃぶ)」を発表し、こちらも期間中56皿を売り上げた。野菜のブロードでさっと茹でて脂を落とし、酸味を利かせたソースで食べるイタリア風しゃぶしゃぶは参加メニューの中で最も和牛の特徴を生かした料理だった。 最も多く売り上げたのが「グルドゥル」の女性シェフ、エンティアーナ・オズメンゼーザでこちらもしゃぶしゃぶながら「コンヌービオ」とは違うアプローチ。やや濃い目の味付けがうけたのか期間中に90食が出た。 日本人シェフとして唯一参加したのは徳吉洋二でこちらは「Osso(骨)」という料理。牛の骨を皿に見立て、カルネ・サラーダ風にマリネした牛肉を手づかみで食べる奇抜なプレゼンテーションだったが、味わいはしっかりイタリア料理にまとめたところはさすがだった。 どのシェフも口を揃えて言っていたのが今後とも恒常的に使いたいが問題は常に供給可能かどうか?ということ。イタリアではまだ取扱量が少なく「世界一高級な牛肉」とその希少性が話題になることが多い。キアナ牛はじめイタリアにもブランド牛肉は多いがイタリア人客の反応を見ても和牛は十分商品になる、全てのシェフがそう感じたようだ。ラーメン、出汁に続いて和牛がイタリアでもムーブメントを起こせるかどうか、それはひとえに今後の供給次第といえる。

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