ミシュラン・イタリア2018 料理界の最新動向
昨年11月に発表された2018年度版ミシュラン・イタリアは話題豊富、近年になく動きのある内容だった。まずいい面から言うならば、9件目となる新しい3つ星レストランが誕生したことだ。ここ数年でいうとエスポワールという将来の3つ星を約束されたヴェローナの「ペルベッリーニ」や、昨年も3つ星獲得かとまことしやかに噂されていたオルタ湖の「ヴィッラ・クレピ」でもなく、新しい3つ星は史上初めて北イタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ州のドロミテ地方にある「サント・ウベルトゥス St Hubertus」だった。 シェフ、ノルベルト・ニーダーホフラーは「ダル・ペスカトーレ」などに学び1996年に同店のシェフに就任すると2007年以来11年に渡り2つ星を維持。まさに満を辞して、という今年の3つ星獲得だった。「サント・ウベルトゥス」の特徴はなんといってもドロミテ地方の食材しか使わないという徹底したテロワールの追求と、局地的マイナー食材である地元のハーブや高山植物などを使った局地的料理「クチーナ・ミクロ・テリトリアーレ」であろう。 これは「グイダ・エスプレッソ」の発表会で同誌の主筆エンツォ・ヴィッサリが予言したことがその一ヶ月後に現実となった。いま世界は未知の料理、未知の食材を求めるフード・エクスペリエンスの時代であり、そうした時代背景がドロミテという地に栄冠をもたらしたともいえる。 一方よくないニュースはといえばミラノの巨人2人、クラウディオ・サドレルとカルロ・クラッコが2つ星から1つ星に降格したことだ。クラディオ・サドレルといえばマルケージに続く世代の筆頭としてイタリア料理界を引っ張ってきた料理人だが、訪れるたびにサービスにも料理の切れにもどこか魂が抜けたような思いを抱いていたのも事実。もう1人のカルロ・クラッコはTV番組マスター・シェフはじめ、おそらくはイタリアでもっとも有名な料理人だが、出る杭は打たれるのかとかく批判の的となりやすい人物である。かつてはマルケージの元で腕を磨いた後エノテカ・ピンキオーリのシェフとして、ピンキオーリ3つ星返り咲きに貢献。のちにマルケージがエルブスコに移転して「アルベレータ・グアルティエロ・マルケージ」となり3つ星獲得した時もやはりシェフはクラッコで、2件でシェフとして3つ星を獲得したのは師匠のマルケージと並ぶ快挙だった。 しかしクラッコは2018年2月にミラノのガッレリア内に移転。こちらもやはり賛否両論だが今後もイタリア料理界の話題の中心であることに疑いはない。 2018年度は3つ星9件、2つ星41件、1つ星301件。以下3つ星を全件紹介する。Nは新昇格を意味する。
3つ星 
Enoteca Pinchiorri(Firenze)☆☆☆
 Dal Pescatore(Canneto sull'Oglio,MV)☆☆☆
 La Pergola(ROMA)☆☆☆ 
Le Calandre(Rubano,PD)☆☆☆ 
Da Vittorio(Brusaporto,BG)☆☆☆ 
Osteria Francescana(Modena)☆☆☆ 
Piazza Duomo(Alba,CN)☆☆☆ 
Reale(Castel di Sangro,AQ)☆☆☆ 
St.Hubertus(San Cassiano,BZ)☆☆☆N

SAPORITAをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。