ピッツァの巨匠フランコ・ペペのピッツァ・デグスタツィオーネ
今イタリアのピッツァの世界でもっとも敬意を払われているピッツァイウオーロが誰か?といえばいろいろ異論はあるだろうがフランコ・ペペをその一人に推さないわけにはいかない。ここ数年Identita Goloseのジャーナリスト、パオロ・マルキらを中心に「イタリアのピッツェリアにもミシュランの星を!」という活動が盛んだが、その中心にありもっともミシュランの星にふさわしいといわれているのがこのフランコ・ペペだ。イタリアにかつて、星を持つピッツェリアが存在しなかったわけではなく、70年代にはサレルノにあったピッツェリア・リストランテが1つ星に輝いた時代があった。しかしそれはあくまで「リストランテ」での受賞であってピッツァがガストロノミーの対象と考えられたことはなかったのだ。 フランコ・ペペは祖父のチッチョが1931年カゼルタ郊外カイアッツォに創業したパン屋で生まれた。父のステファノ、そして兄弟のアントニオ、マッシミリアーノも家業を継いでパン職人となり、店ではピッツァも焼いて売っていたが、変革が訪れたのはフランコの代になってからだ。ピッツァ職人というよりも研究者、学者的風貌のフランコ・ペペは、粉の配合や発酵の研究を経験則ではなく科学的にアプローチし、「キロメトロ・ゼロ」をテーマに地元の食材を前面に出すピッツァを作り始めた。こうしたフランコ・ペペのピッツァはいつしか「テーラーメイド・ピッツァ」とも呼ばれるようになった。天然酵母とビール酵母をミックスし、粉は全て独自にブレンド。製パン・ミキサーは一切使わず生地は全て手で作り、温度と湿度を徹底的に管理する。そしてフランコ・ペペは、それまで誰もやってこなかったピッツァの世界に「テロワール」という概念を持ち込んだのだ。 実家のパン屋の片隅で始めた実験的ピッツァが成功すると2012年には現在のスタイル、コースで提供する「ピッツァ・デグスタツィオーネ」の「ペペ・イン・グラーニ」を開店、この「ペペ・イン・グラーニ」こそ、現在もっとも星に近いピッツェリアと呼ばれている。そのスター・ピッツァイウオーロ、フランコ・ペペは「サンペレグリノ・ヤングシェフ」最終日、スタッフとともに3台のピッツァ窯を特設会場に持ち込み、300人のゲストに5種類の「ピッツァ・デグスタツィオーネ」を焼き続けたのだ。




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