リヴォルノの隠れ名所 Oil Bar
Terrazza Mascagniの眺望。遠浅の海は透き通って青い。
人口ではフィレンツェ、プラートに次ぐトスカーナ第三の都市であり、かつてはメディチの商港でもあったリヴォルノ。魚介のごった煮スープのカッチュッコや、白色レグホンの元となったリヴォルノ鶏が名物だが、町そのものはのんびりおっとり、特段見るべきものは海だけといった風情である。でも、美味しいもの探しを趣味とするのであれば、市場は是非とも訪れるべきだろう。Mercato delle Vettovaglie、一般的には中央市場と呼ばれ、イタリア統一後に各地で起こった都市改造の動きに合わせて突貫工事で建設された。完成は1894年、その後第二次世界大戦時の爆撃で破壊された部分が修復されたが、折衷様式の建物はベルエポックの趣をよく残している。外観からは2階建に見えるが、中は地上階のワンフロアのみ、精肉、パンの部門の奥に魚と青果がそれぞれ二手に分かれている。どの街の市場にも起きていることだが、店舗の半分くらいは閉まっており、特に10年前にはいくつかあった卵専門店が激減し、青果店がほとんど消滅しているなど、寂れた感は否めないが、オイスターバーが新しくできるなど、少しずつ変化はしている。
メルカート・デッレ・ヴェットヴァッリエ(中央市場)
ユニークなのはパンで、同じトスカーナでも内陸のフィレンツェなどとはパンの品揃えが少し違い、形状も微妙に異なる。スキャッチャータ(スティアッチャータ)の表面はフィレンツェでは意図的に開けた穴が目立つのに、ここのは揚げ煎餅のようなひび割れが特徴的。黒胡椒をふりかけたものなどはワインやビールのつまみにぴったりだ。とある一軒のパン屋では、「アリスタ」と名札がついた丸いパイのようなパンがあり、もしやアリスタを詰めたミートパイかと思ったら、中身は何もない。おそらく、豚ロースの塊をローストし、スライスしたアリスタに見た目が似ているから、そう呼んでいるのだろう。庶民のつましさが滲み出たパンだが、パイのように油脂をたっぷり使っていて、これはこれで酒の供にはなる。昨今の流行りであるグラーニ・アンティーキ(古代麦)を使ったパンも人気のようでトスカーナパンよりも早く売り切れていた。
黒胡椒たっぷりのスキャッチャータPepinaと肉じゃないのに肉の名前が付いているAristaパン
しかし、このリヴォルノの市場での注目株は、「Oil Bar」だ。場内のほぼ中央に位置する、元々は普通のバールなのだが、ここにはコンテストで入賞するような優れた品質のオリーブオイルが北はガルダ湖畔から南はシチリアまで勢揃いしている。オリーブオイル・ジャーナリストのマルコ・オレッジャが主宰するFlos Oleiのサポートスポットとしての認定証が掲げられ、普通はリキュールやスピリッツが並んでいるような棚には、シチリア、カンパーニア、プーリア、トスカーナ、ウンブリア、ラツィオ、ヴェネトなど生産地を示す札とともにオリーブオイルが鎮座。これらの中から試飲して気に入ったら購入できるオリーブオイル・バーなのである。 イタリアには400種ほどのオリーブ品種があり、各地で特徴的なオリーブオイルが作られているが、それらはその土地に行かなければ入手できない。高級食料品店やEatalyのようなセレクトショップではよその土地の上質なオイルも扱うようになってきているが、試飲までできる店はほとんどない。だから、「Oil Bar」のような店は貴重なのである。市場は見ているだけで楽しいが、やはり何かを旅の記念に持ち帰りたい。オリーブオイルはそういう欲求を満たしてくれる“土産物”でもあるのだ。 気に入ったボトルを一本買うのもいいし、生産者組合がプロデュースしている「Opera Olei」なら100ml瓶が品種別に6種類(シチリアのトンダ・イブレア、トスカーナのフラントイオ、ラツィオのイトラーナ、ヴェネトのカサリーヴァ、カラブリアのオットブラティカ、ウンブリアのモライオーロ)一箱に収まっていて、味比べが楽しめる。リサイクル段ボールのケースに入っているので、ややかさばるが破損の可能性は低い。ちなみに値段はワンセットで30ユーロ。 どれにしたらいいか迷ったら、常備されているFlos Oleiのガイドブックを参照するのもいいが、店主のアレッサンドロにアドバイスを求めてみるといい。コンテストで入賞していなくとも隠れた良品オイルを教えてくれるかもしれない。

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