最新キーワード「クアットロ・マーニ」
ここ数年、イタリアでよく耳にするのが「クアットロ・マーニ」というイベント。これは4 mani = 4つの手、という意味でシェフ2人による競作を意味する。英語でも近年では4 handsと呼ばれているのでごくごく一般的な表現になりつつあるが、日本語でなんというか?というとちょっと訳しにくい。イタリアの場合コース仕立てで前菜、プリモ、セコンド、ドルチェを2シェフが2品づつ担当というのが通常多い。あるいはシェフとピッツァイウォーロ、ソムリエあるいは生産者とシェフ、日本で多いメーカーズ・ディナーというのもそれに準じた「コラボ・ディナー」である。
先週のサンペレグリノ・ヤングシェフ」期間中、2回の「クアットロ・マーニ」に参加する機会があったが、まずはベルガモの3つ星「ダ・ヴィットリオ」シェフ、「キッコ」ことエンリコ・チェレアとミラノの1つ星「D.O.」シェフ、ダヴィデ・オルダーニによる「クアットロ・マーニ」のランチ。
Spaghetti di tonno con salsa bagna cauda, crumble di pistacchi by ENRICO CEREA
スパゲッティ、という料理名なものの本当はマグロを軽くマリネしジュリエンヌ。スパゲッティ状に巻いた料理だ。ニンニク、牛乳、アンチョビで作るピエモンテ風バーニャカウダ・ソースに、地中海のイメージ食材であるピスタチオがアクセント。
Green Spring by DAVIDE OLDANI
クチーナ・ポップ、を近年はテーマとしているダヴィデ・オルダーニのプリモは滑らかなパスタ生地で詰め物を挟み込んだ、オルダーニの師匠マルケージの名作「オープン・ラヴィオリ」を彷彿とさせる料理。パスタ生地の下にはそら豆、グリーンピース、アスパラガスなど緑をテーマとした春の食材が軽いベシャメルとともに隠されている。
“Yellow” baccala alla Mediterranea con mousse di zafferano e ghiaccio di erbe by ENRICO CEREA
メインはバッカラを使ったエンリコ・チェレアの作品。「ダ・ヴィットリオ」は魚介専門の3つ星で知られ、10皿前後のコースメニューはすべて魚介類で構成される。ミラノ料理のキーワードのひとつであるサフランはザバイオーネ風に温かく、ハーブウォーターのシャーベットを添えて3種類の異なる温度で登場した。
Albicocca, cioccolato e biscotto di basilico by DAVIDE OLDANI
アプリコット、と名付けられたドルチェは実は中にチョコレート・ベースのガナッシュが仕込まれている。サクサクのバジル・ビスコッティが爽やか。
もう1回は同日夜に行われた初代チャンピオン、マーク・モリアティと第2回大会チャンピオン、ミッチ・ラインハートによる「クアットロ・マーニ」ディナー。
Gamberi marinati con pomodoro e aceto di alghe by MITCH LIENHARD
エビをヴィネガーでマリネし、同じくヴィネガー・ベースのジュレ、イクラ、柑橘。酸味がかなり効いた冷たい前菜。
Foglie grigliate con cozze e brodo di maiale by MITCH LIENHARD
レタス、 ビエトラなどの葉野菜を香ばしくグリルし、ムール貝と豚のブロードでまとめた温かい前菜。葉野菜は食感もよかったが、ブロードはやや塩がきつかった。
Vitello arrosto con pane dolce, piselli, spugnoli, zabaione di aglio selvatico by MARK MORIATY
100人を超えるガラディナーということもあるが、登場した子牛の胸腺肉は残念ながらオーバークック。グリーンピースのソースとモリーユ、濃厚な子牛のフォンのソース。
Guinnes, Blackcurrant, cioccolato di TOSCANO 70% by MARK MORIATY
アイルランド出身のマークらしくギネス・ビールを使った濃厚かつスモーキーなデザート。粘土も強く、重いデザート。ランチとディナーという違いはあるが、地中海的解釈の料理とアングロサクソン的解釈の料理という両極端が垣間見えたクアットロ・マーニ。
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