EATALY内のミシュラン1つ星「ALICE アリーチェ」
東京の代官山店を唯一の失敗例として、イタリアはじめアメリカでも大成功しているEATYALYは各店舗に個性あふれるメインダイニングがあることも魅力のひとつである。ローマは3つ星シェフ、ニコ・ロミートの「SPAZIO」、フィレンツェは気鋭の若手料理人エンリコ・パネーロの「Da Vinci」そして2014年3月ミラノにオープンしたEATALY SMERALDOのメイン・ダイニングは注目の女性シェフ、ヴィヴィアナ・ヴァレーゼ率いる「ALICE アリーチェ」だ。1974年生まれ、マルケージの「アルベレータ」で料理人としてのキャリアをはじめたヴィヴィアナはやはりマルケージ・チルドレンである「マルケジーニ」、いや女性なので正確にいえば「マルケジーナ」だ。 スペインの3つ星「カン・ロカ」で働いた後ミラノ近郊ローディに「Il Girasole」をオープン。やがて現在のパートナーである女性ソムリエ、サンドラ・チチリエッロと知り合い2007年に「ALICE」をミラノに開き、EATALY SMERALDOのオープンと同時に現在の場所へと移転した。 かつてはアニー・フェオルデやナディア・サンティーニがイタリアを代表する女性シェフだったが、現在のイタリア料理界でトップを走る女性シェフといえばローマの「Glass Hostaria」のクリスティーナ・ボウアーマンとこのヴィヴィアナ・ヴァレーゼの名が第一に上がる。ヴィヴィアーナの特徴を一言でいえば、他社を圧倒する強烈な美意識が凝縮されているということにつきる。例えば冷製ウニのリングイネの料理名は「Verde Brillante ヴェルデ・ブリッランテ=輝く緑€32.00」という。一見緑色の皿に盛られたかに見えるパスタだが、実はこれはイタリアン・パセリのソースを塗り、冷たく冷やした皿であり、誤って手を触れようものならしっかりと指紋が残ってしまうはず。そしてこのグリーン・ソースがウニとよくあい、皿の上で絵の具を混ぜるようにして食べるのだが、いかにソースを美しくぬぐうか、という点において食べ手の美意識も問われる。 「Polpo Fiction ポルポ・フィクション€28.00」はタコ(ポルポ)の料理だ。柔らかく日を通したタコの足にさやいんげん、モロッコいんげん、ジャガイモ、そして多くの葉野菜を使い、軽めのペスト・ジェノヴェーゼで食べる。現在のイタリア料理の盛りつけのトレンドはアシンメトリーで非構成主義。あらゆるエレメントをあえて混ぜない、というのが主流だがこの料理はまさにその極致ともいえる。しかし野菜とタコ、というシンプルな構成は食べ飽きない。料理名はタンランティーノの映画に由来することは言うまでもない。 ヴィヴィアーナの代表作のひとつ「Carpaccio e fantasia カルパッチョとファンタジー€30.00」は、その日の新鮮な魚介をカルパッチョにしたものだが、この日のソースと魚介類のあわせは以下の通り。カサゴと青リンゴ、ブリとパッション・フルーツ、真鯛と桑の実、イシモチとパイナップル、ヒメジとピンク・グレープフルーツ。それぞれ果糖と酸味をいかしてマリネし、草間弥生を皿の上に再現したかのようなプレゼンテーションだ。 デザートは「Albicocca in un campo di mais トウモロコシ畑の中のスモモ€14.00」これはトウモロコシのジェラート、薫製トウモロコシ、スモモのスポンジとソースという最小限のテーマ食材を多くの手法、異なるテクスチャーで表現する技術の集大成。以上はアラカルトだがこのクオリティかつミラノのミシュラン1つ星にしてディナーコースで€80.00〜というのは破格の値段だと思う。c/o EATALY MILANO SMERALDO Piazza 25 Aprile,10 MILANO Tel02-49497340 12:30〜14:00、19:30〜22:00 日休 ランチ・コース€43.00、ディナー・コース€80.00〜 www.aliceristorante.it
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