SABATINI@FIRENZEの実力
しばらくクローズしていた銀座サバティーニが10月にリニューアル・オープンするとの話を耳にした。温故知新の東京イタリア料理史でいうならば西麻布にあったチブレオと並んで、いや歴史的にも格的にもサバティーニのほうがやはり上だろう。フィレンツェ・レストラン史で同格に語られるのは同じくかつて銀座にあったエノテカ・ピンキオーリぐらいだろう、と思って調べていたらなんとそのジョルジョ・ピンキオーリも若い頃にはサバティーニで働たことがあったという。 サバティーニのゲストブックを飾るのは、ルービンシュタイン、フレッド・アステア、ポール・ニューマン、ズービン・メータ、デンゼル・ワシントン、マドンナ、スティングなどなど。過日、フィレンツェの1つ星シェフ、マルコ・スタービレの新刊発表会があった時、マルコもかつてサバティーニでも働いていたことがあり、もっとも影響を受けたのが当時のシェフだった、と語ったことは少々驚きだった。というのも、1970年代のミシュラン2つ星(!!)をピークにその後のサバティーニは盛者必衰の見本ともいえるような存在となっていたからだ。 史上初めてイタリアに3つ星もたらしたのは1986年度版のグアルティエロ・マルケージなので、当時の2つ星といえばイタリア・レストラン界の最高峰。同じく2つ星だったヴェネツィアのハリーズ・バー、イモラのサン・ドメニコ、パレルモのチャールストンらと並ぶ名店だったのだ。しかし時は流れ、90年代以降は日本での知名度アップに比例して、大手旅行代理店のツアー客が団体で食事に来る機会も増え、事実新婚旅行にパックツアーでサバティーニを利用した知人は「イタリアって本当は美味しくないんだね」とがっかりしていたことがいまも忘れられない。創業以来すでに100年を超え、一時はフィレンツェ一の名店と言われたこともあったが、一時代を築いたクラウディオ・スキアーヴィとカルロ・ラッゼリーニの時代は終わり、今年になってレストラン・パイオーロを経営するアルバニア人、ジュリエン・ゴレーミがオーナーとなった。現在のサバティーニは如何なものか?そう思って8月のある日、サバティーニを訪れてみた。 サバティーニのスペシャリティは、フランベ料理であり、クチーナ・フィアンマと自ら公言している。これはおそらく70年代当時ヌーベル・キュイジーヌの影響でゲリドン・サービスを行なっていたことに由来すると思われる。現在も3皿からなるフランベ・コース₡95(2名から)が食べられるが内容は以下の通り。Spaghetti alla SABATINI
Rognoncino di vitella di latte / Filetto di Chianina al cognac / Scampi alla pescatora
Crepe Suzettes
スパゲッティ・アッラ・サバティーニ
乳飲み仔牛のロニョン、またはキアナ牛のフィレ・コニャック風味、または手長海老のペスカトーラ
デザートはフランベ料理の定番クレープ・シュゼット
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