フィレンツェのランプレドット・ベスト3
フィレンツェを代表する味のひとつ、ランプレドットとは日本語でいうギアラ、牛の第四胃袋のことである。フィレンツェの街中を歩くとランプレドットを食べさせる屋台がいくつかあり、そうした屋台はランプレドッタイオ、またはトリッパも食べさせることからトリッパイオと呼ばれているが、実はそうした屋台の中でもそれぞれ微妙に仕込みが異なり、ディテールも異なっていることに気づいている人はどれぐらいいるだろうか?スローフード協会が発行するオステリア・ガイド Osterie d’Italia 2019ではそうしたランプレドッタイオ(トリッパイオ)が12件紹介されており、ほとんどが有名店あるいは名物店だがどのようなランプレドットを出すのか?までは触れていない。そこでそれぞれのディテールに触れながら、これぞフィレンツェのランプレドット・ベスト3!!という3件を紹介したい。
第3位 Mario Albergucci@Piazza Porta Romana
マリオ・アルベルグッチ@ポルタ・ロマーナ広場
フィレンツェを取り囲む南側城壁のすぐ外、ポルタ・ロマーナ門脇にあるトリッパイオ。長らく伝説のトリッパ職人マリオ・アルベルグッチの店として、フィレンツェ中心部ではないにも関わらず圧倒的人気を誇る店。2016年にマリオが引退を宣言、Osterie d’Italiaからは姿を消したものの、店は後継者が後を継ぎ変わらぬ味を守っている。ランプレドットにはブロードにトマトを加えた赤とブロードのみの白が存在するのは、アマトリチャーナとグリーチャの関係のようなものだが、この店のランプレドットは赤。トマトのほどよい酸味と大量のプレッツェーモロが食欲をそそる。また、日替わりも数種類あり、ランプレドットとカルチョーフィ、ランプレドットとビエートラ、セッピエ・インツィミーノなどもパニーノにしてくれる。パンはクラストががっちりしたタイプで、これがランプレドットの汁気をうまく閉じ込めてくれる仕組みになっている。ワインは赤のみ、というのも徹底している。
第2位 ‘L Trippaio di San Frediano
イル・トリッパイオ・ディ・サンフレディアーノ
アルノ川左岸の下町、サンフレディアーノ地区にあるは屋台ながらも最新のキッチンを導入、各種オーダー・パニーノに応えてくれるばかりか、フライヤーもあるので揚げたてのコッコリも食べられる。ここのランプレドットはオーソドックスでバランス良いトマトなしの白ランプレドットで、カウンターやテーブル席もあるので落ち着いて食べられる。また、変わり種も多くポッパ=牛の乳房、は繊維質でいわゆるコンビーフ状。これを薄く切り、鉄板で焼いてから挟んでパニーノにしてくれる。味付けは定番のサルサヴェルデとペペロンチーノ。パンはトリッパイオがよく使う独特のテイアドロップ型。
第1位 L’Antico Trippaio
アンティコ・トリッパイオ
フィレンツェ旧市街、チマトーリ広場にあるトリッパイオはこの場所で営業を始めてすでに90年以上が経つという。店主のロベルトは毎朝5時から準備を始め、なによりもブロードにこだわる。香味野菜とトマト、プレッツェーモロのブロードでトリッパを煮込むのだが、大げさにいえばランプレドットよりもブロードがうまい、と思わせるほどだ。パニーノを仕上げる際、半分に切ったパンの上部をブロードに浸す(バニャーレ)のだが、赤いブロードをたっぷりと含ませたパンを見るだけで腹が鳴る。ランプレドットは非常に上質で、他店のものよりもクオリティ的に一歩抜きん出ている感がある。注文する際「コンプレート=全て」といえば、サルサ・ヴェルデ、ペペロンチーノ、塩胡椒、ブロードで味付けしてくれるが、イタリア人はこの辺りも結構こだわりがあり「塩胡椒だけ」とか「サルサ・ヴェルデのみ」など細かい注文をするのもバール同様、イタリアの食文化のひとつである。
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