プロセッコDOC探訪その4 家族経営、生産者組合、大企業。多様性誇るプロセッコ
プロセッコDOCはヴェネト州とフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の合わせて9つの県が生産地域に指定されており、瓶詰めまで行う生産者は348社あると既に書いたが、その中には、家族経営の単独オーナーワイナリーから、生産者組合式ワイナリー、そしてワイナリーグループを形成する大企業系列のワイナリーまで様々ある。それぞれが特徴を生かし、多様なプロセッコ(やその他ワイン)を生み出している。
例えば、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリアのポルデノーネ県にあるイ・マグレディは、トンバッコ家が1968年から所有する家族経営ワイナリーだ。当初は、りんご、桃、ぶどうを栽培する果樹農園だったが、1980年代末からはぶどう栽培に絞り、ワイナリーとしてスタートを切った。プロセッコの他に、DOCグラーヴェのシャルドネ・フリウリ、ソーヴィニヨン・フリウリ、ピノ・グリージョ・フリウリ、カベルネ・フラン・フリウリ、メルロー・フリウリ、レフォスコ・ダル・ペドゥンコロ・ロッソ・フリウリなど、様々なワインを手がけている。醸造所は1990年に始まり、2000年、2003年、2007年と増改築を重ね、今年もまた最新式の設備を新たに加え、まだまだ伸び盛りといったところ。それでも、地元に根ざし、伝統を忘れないところは随所に見られ、例えば訪問者が最初に目にする醸造所脇の畑では放射状にぶどうの畝を配置し、その中央に果樹農園であったことを示すりんごの木を一本残している。また、オステリア・ショップでは量り売り用のワインのステンレスタンクが並び、その前のテーブルでは近所のおじさんたちがワインを片手におしゃべりを楽しんでいる。こういう姿を見ると、ここのワインはきっと美味しいのだろうと思えてくるから不思議である。
同じポルデノーネ県のカサーラ・デッラ・デリツィアにあるラ・デリツィア社は450以上の組合員とその2,000haの畑を持つ生産者組合ワイナリーだ。組合の設立は1931年、当時でも70の組合員を数え、フリウリでは最大規模であった。醸造所は鉄道駅に近く、敷地のすぐ脇を線路が通っている。運搬には便利な立地だが、時を経て組合員が増え、設備を拡大する必要ができてもままならず、上へと伸びていくほかはない。だから、恐ろしく高いステンレスタンクがぎっしりと林立したり、細長く不規則な敷地の中を複雑に入り組んだ設備設計いうことになる。視覚効果を狙ったデザインワイナリーとは違った、ある意味、カオスな雰囲気がある。展開するワインはまた多彩で、ベーシックラインであるプロセッコDOC Extra Dryの他に、ラ・デリツィアブランドで白7種、赤3種、スプマンテに特化したナオニスブランドでプロセッコDOC Extra Dry、プロセッコDOC Brutのほか4種、スティルワインのハイエンドシリーズとしてサス・テールブランドで白5種、赤2種を生産している。どのブランドもボトルやエチケットデザインが洗練されており、生産者組合という言葉から受けるクラシックなイメージから脱却した、先進的なワイナリーであることを示している。
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