ミシュラン東京2019、イタリア料理店についての考察
去る2018年11月21日、ミシュラン東京2019年度版の発表会が行われたが「会場、日時など事前告知はお控えください」という通達の元、限られたメディアのみが出席を許されるクローズドな発表会だった。午後からの受賞パーティには時間的に出席できず、出席したのは午前中の記者会見のみだったが、この時点で2019年度の受賞店リストが配布され、各メディアは一斉に受賞店リストを配信したのである。すでにその詳細についてはミシュラン東京2019年度版も発売されているし、各メディアで受賞店リストも公表されていることからここではイタリア料理店についてのみ考えたい。ちなみに2019年度版、イタリア料理関連での受賞店は以下の通りである。 ☆☆☆ そのために旅行する価値のある卓越した料理 ミシュラン最高峰の三つ星は、キャリアを極めたシェフの卓越した料理に授与される。最上の食材を使った料理は芸術の域に達しており、後世に受け継がれることも多い。 三つ星合計13件(日本料理6件、フランス料理3件、寿司3件、ふぐ1件、イタリア料理0件☆☆ 遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理 熟練した技術だけではなく、眼を見張る食材の質や独自性など、料理は洗練されている。 二つ星合計52件(日本料理19件、フランス料理14件、寿司9件、天ぷら3件、スペイン料理2件、イノベーティブ2件、精進1件、中華1件、韓国1件、イタリア料理0件☆    近くに訪れたら行く価値のある優れた料理 食材の質、調理技術、味付けの完成度など、そのカテゴリーの規範となる。 一つ星合計165件(日本料理42件、フランス料理39件、寿司22件、イタリア料理12件、中華9件、天ぷら8件、焼鳥7件、蕎麦4件、うなぎ3件、すき焼き3件、牛肉3件、らーめん3件、蟹2件、イノベーティブ2件、スペイン1件、ふぐ1件、精進1件、ステーキハウス1件、おでん1件、居酒屋1件) 星付き合計230件の内訳はというと以下の通りだ。 日本料理67件(29%)、フランス料理56件(24%)、寿司34件(15%)、イタリア料理12件(5%)、天ぷら11件(5%)、中華10件(4%)、焼鳥7件(3%)、イノベーティブ4件(2%)、蕎麦4件(2%)、スペイン3件(1%)、うなぎ3件(1%)、すき焼き3件(1%)、牛肉3件(1%)、らーめん3件(1%)、蟹2件、精進2件、スペイン1件、ふぐ1件、ステーキハウス1件、おでん1件、居酒屋1件、韓国1件=以上は1%未満) 二つ星以上がない東京のイタリア料理はミシュランの評価が低い、と言われるが一つ星以上の掲載件数に関していえば日本料理、フランス料理、寿司に次ぐ第4位で天ぷらや中華を上回っており、個別に見れば疑問点もあるが、総合的には高く評価されているともいえるのではないだろうか。ちなみに1つ星店は全て中央区、港区、目黒区、渋谷区だ。 一つ星のイタリア料理店は以下の12件(新規獲得店は無し) アロマフレスカ(銀座) 3本フォーク赤(快適度を表す) イカロ(中目黒) 1本フォーク黒 タクボ(代官山) 2本フォーク黒 ハインツベック(大手町) 3本フォーク赤 ピアットスズキ(麻布十番) 2本フォーク黒 プリズマ(南青山) 1本フォーク赤 プリンチピオ(麻布十番) 2本フォーク黒 ブルガリ イル リストランテ ルカ ファンティン(銀座) 3本フォーク黒 ボッテガ(広尾) 1本フォーク黒 ラッセ(目黒) 3本フォーク黒 リストランテ ホンダ(外苑前) 2本フォーク黒 レガーロ(参宮橋) 2本フォーク黒 快適度を加味するとミシュランの評価ではアロマフレスカとハインツ ベックが東京で最高峰のイタリア料理店ということになるようだ。ちなみにビブグルマンは2019年度版から5000円以下で価格以上の満足感が得られる店、と規定が変わったが以下の通りだ。 ◉価格以上の満足感が得られる料理 良質な食材で丁寧に仕上げられており5,000円以下で楽しめる。 ビブグルマン合計254件(フランス料理32件、居酒屋28件、ラーメン21件、蕎麦19件、イタリア料理15件、日本料理15件、中華14件、とんかつ13件、焼鳥11件、餃子8件、天ぷら7件、うなぎ7件、スペイン7件、洋食6件、おでん5件、寿司5件、ピッツァ5件、お好み焼き4件、ベトナム3件、インド3件、うどん3件、カレー3件、欧風2件、ペルー2件、ちゃんこ2件、韓国2件、おばんざい2件、ポルトガル2件、タイ1件、沖縄1件、穴子1件、どじょう1件、鳥料理1件、おにぎり1件) ここでは様子が大きく異なる。5000円以下で楽しめるのは1位フランス料理、2位居酒屋、3位ラーメン、4位蕎麦、5位イタリア料理。イタリア料理はとんかつ、焼鳥、餃子を上回ったが蕎麦やラーメンの後塵を拝した。ある意味麺好き日本人の体質を示したものでもあるが蕎麦、ラーメンは専門店でありイタリア料理店はアラカルト中心のレストランである。さらに言うならば上位3カテゴリー、フランス料理、居酒屋、ラーメン。5000円の予算で何を食べに行くかという時、この3カテゴリーから3者択一で選ぶ、というのはなかなか考えにくい。ちなみにビブグルマン掲載のイタリア料理およびピッツァは以下の通りだ。 アンティカ ブラチェリア ベッリターリア(目黒) オステリア ダ カッパ(銀座) コンチェルト(代々木上原) サンヤコピーノ(錦糸町) トラットリア イ・ビスケロ(新木場) トラットリア ダディーニ(白山) トラットリア ブカ・マッシモ(門前仲町) ペル・バッコ(東中野) ベント・エ・マーレ(西五反田) ラ・パスタイオーネ(麻布十番) ラ・ブリアンツァ(六本木) ラ・ベットラ・ダ・オチアイ(東銀座) リストランテ クチーナ・シゲ(西大島) リンシエメ(亀戸) ルーピ トレンタドゥエ(阿佐ヶ谷) ロットチェント(日本橋) ピッツァ スタジオ タマキ(東麻布) ピッツァバー on 38th(日本橋) ピッツェリア ベッラナポリ(門前仲町) ビブグルマン掲載のイタリア料理店は、星付きが港区など都心部中心だったのに比べると住宅街、特に東京東部の掲載店が目立つ。総合するとミシュラン東京2019年度版が評価するのはこうなる。つまり予約して食べに行きたい高級料理店は日本料理、フランス料理、寿司。安くて美味しいものを食べたいならばフランス料理、居酒屋、ラーメンということになるが、その選択肢はやや偏りがあるのではないか。ちなみに気になるミシュラン調査員だが、日本版の場合は全て日本ミシュランタイヤ株式会社の社員が行なっているという。人数は不明だがおそらく日本人社員もフランス人社員もいるのだろうが、星付き店リストではなく、東京東部、居酒屋、ラーメン、蕎麦、そしてフランス料理が評価されるという実に矛盾したビブグルマン掲載店をみていると、そのあたりの事情が垣間見えるような気がしないか?

SAPORITAをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。