サルデーニャ!25カリアリ、ズィア・ペッピーナ
イタリアでは、お菓子が美味しいのはシチリア、というイメージがある。リコッタクリームを詰めたカンノーリやマジパンと砂糖漬けの果物で飾ったカッサータがあり、ジェラートにおいては発祥の地でもある。しかし、サルデーニャも負けてはいない。否、家庭で作られる伝統菓子の層の厚さはサルデーニャのほうが上ではないかと思う。祭りや結婚式、誕生祝いに洗礼式といった祝祭の折りに、女性達はたくさんの菓子を作る。家族だけでなく、村中にふるまうためである。多くの人たちに食べてもらうため、また長い期間楽しんでもらうため、小ぶりで日持ちのする焼き菓子を種類もふんだんに用意する。そして、一つ一つをグラッサ(砂糖衣)で飾り付けたり、カラフルな紙で包んだりと手間もたっぷりかけるのだ。エリオの姉のマリネッラも何かおめでたいことがあると自分で菓子を作る。かつて、娘の大学の卒業祝いに用意した菓子の写真を見て仰天した。テーブルいっぱいに菓子が並び、しかも、そのテーブルは幾つもあったのである。 しかし、一般的に現代の都市の集合住宅では大量の菓子を作るのはなかなか難しいことであり、菓子作りは次第に菓子専門店の仕事となりつつある。それは寂しい話ではあるけれど、一般家庭にお邪魔するわけにはいかない我々のような旅行者には、専門の店で伝統菓子に出会えるのは嬉しい。「ズィア・ペッピーナ」はそんな伝統菓子専門店だ。こぢんまりとした女性だけで営む店である。ガラスケースにはいろいろな形の焼き菓子が並び、誘うような甘い香りを漂わせる。スイートアーモンドとビターアーモンドと卵白を練り混ぜて焼いたアマレッティ、アーモンドとオレンジ花水で作った丸いビスッコティをパステルカラーの紙でキャンディ包みにするグエッフス、スルタナ・レーズンとくるみの入った菱形のパバッシノス、シナモンを効かせ砂糖衣で覆ったモスタッチョリ、レモンの香りのする卵黄たっぷりのピリキットス、リコッタとサフランの生地をパイに詰めた復活祭の菓子パルドゥラス(カサディナスとも)。これらはほんの一例にすぎず、ほかにもさまざまな小さな菓子がある。どれもみな素朴で懐かしい甘さが好もしく、我々は土産に持ち帰って朝食代わりにしばらくサルデーニャの味を楽しむのである。SAPORITAをもっと見る
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