サルデーニャ!19カリアリ、サン・ベネデット市場
カリアリに来るたびに我々が必ず訪れるのが、サン・ベネデット市場だ。1957年6月に完成した2階建てで総面積8千平米、イタリアで最大の一般向け市場である。ここの凄さは一階がすべて魚売り場であること。肉や野菜、チーズなどは二階に集められている。魚の種類は豊富で、鯛やヒラメやスズキはもちろん、アナゴ、伊勢エビ、アワビにカニ、季節にはウニもある。もちろんマグロやカラスミもある。ここを見るたびに「いいなぁ、カリアリに引越してきたいなぁ」と思う。さらに、二階に上がり、プルチェッドゥ用に縦まっ二つに割られた仔豚だの、各地のいろんな熟成具合のペコリーノだの、小さなとげをつけたアーティチョークや小ぶりで青みがかった(でもものすごく甘い)トマトなどを見るにつけ、引越願望が高まるのである。 この市場を教えてくれたのは、サルデーニャ出身の料理人エリオのお姉さん、マリネッラだ。正しくは教えてくれたというよりも、マリネッラの一家がこの市場のすぐ近くに住んでいるから、彼らの家を訪ねたときに必然的に「市場を見てらっしゃい」ということになったのだ。マリネッラとその夫のミケーレはこれまたすぐ近くで小間物屋を営み、菓子作りの材料や道具、台所用品などを扱っていたが、つい先年、年金生活の開始とともに店は閉めてしまった。暮らしの雑貨を無数に取り揃えていて見ているだけで楽しい店だったのに。サン・ベネデットの市場では必ずカラスミを買うことにしている。エリオがマリネッラに送ってもらっているのと同じカラスミである。彼らによるとカラスミは黄金色のものがいいという。熟成が進むと褐色がかってくるが、そうなる前に食べろというのだ。まだ柔らかい黄金色のカラスミをすりおろし、たっぷりのオリーブオイル、ちぎった唐辛子、ちぎったバジリコをスプーンでよく混ぜて、さらにスパゲッティのゆで汁も少々加えて混ぜ、とろりと乳化したところへゆであがったスパゲッティを加えてしっかりと和える。これがエリオ自慢のカラスミ・スパゲッティの作り方だ。実に簡単だが、とても美味しい。SAPORITAをもっと見る
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