サルデーニャ!22カリアリ、ス・クンビドゥ
カリアリで庶民的な料理屋を探すなら、ローマ通りとラルゴ・カルロ・フェリーチェ通り、レジーナ・マルゲリータ通りに囲まれた一帯をぶらぶらするといい。ジェノヴァもそうだが、港に面した下町には料理屋が集まっているのだ。店の外に掛けられたメニュを見、表から中を覗いて、ここぞという店を探すのは楽しい作業である。しかし、我々が「ス・クンビドゥ」に入ったのは偶然だった。旅疲れと食べ疲れで半ば投げやりに「ここでいいか」と決めたのが最初である。しかし、そこはちょっと変わったシステムで、しかも、意外と使い勝手がいいことがわかり、それ以来、“迷った時のス・クンビドゥ”となっている。イタリア語で「招待状」という名のこの店、席数多く、壁にはコルク樫の盆皿や農具などが飾られ、居酒屋とファミリーレストランを合わせたような気取りのない雰囲気である。我々はいつも早い時間に利用しているので席がないというような場面に遭遇したことはないが、イタリア人の外食スタートタイムである21時頃は大抵満席なので予約なしだとちょっと難しい。 席に着くとまず飲み物を聞かれるので、ハウスワインの赤を注文する。界隈は魚介の店ばかりだが、ここは肉料理の店なのである。テラコッタのカラフェに入った赤ワインとガラスボウルいっぱいのセロリ、にんじん、トマトなどのピンツィモーニオ(生野菜盛り合わせ)を持ってきたカメリエーレが、前菜を食べるかと尋ねてくる。ここの前菜も、木の板皿に盛り込んだ野菜やきのこのマリネ、パーネ・カラサウの上に載せた生ハムやサラミ、ペコリーノチーズ、そして、そら豆の煮込みやカタツムリのトマト煮など温かい料理2〜3品が一斉に供される、前菜お食べ地獄である。これだけでお腹一杯にしないように気をつけるのだが、いかんせん量が多い。パスタは諦めてこの店得意の肉料理に進む。(しかし、周囲を見回すとみんなパスタを食べている。大皿山盛りのトマトソースのパスタとか。)その日その時によって食べられる肉料理は若干異なるが、マイアリーノ(仔豚のオーブン焼き)か仔牛のローストであることが多い。肉はジューシーで皮がぱりっと焼けた仔豚や、柔らかく淡白な仔牛の焼き肉には、若くてフルーティな赤ワインがよく合う。夏の暑い時はガス入り水で割ってもいける、気楽なワインだ。食後にはトローネ(卵白と砂糖、木の実を練り合わせたヌガー)やリキュールをたっぷり含ませたマジパンのチョコレートがけなど一口菓子とグラス一杯のデザートワインがついて、一人25〜30ユーロくらい。安くてたっぷり、だから混雑も道理の店である。SAPORITAをもっと見る
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