イタリア・サルーミ図鑑5モルタデッラ Mortadella

モルタデッラ マイルドな味わいが特徴の加熱系サルーミ

プロシュットやサラーメと並び、最も有名で世界中で食べられているイタリアのサルーミ。その産地の名をとり「ボローニャ・ソーセージ」と呼ばれることもある。ローマ時代の1世紀頃からエミリア・ロマーニャ州からラツィオ州にかけての中部イタリアで作られはじめたが、中世にはボローニャの修道士たちが作るだけになった。その語源はモルタイオ(=乳鉢)を使うから、と誤信されることもあるが、本来の語源はラテン語で「ミルトを使って香り漬けした詰め物」という意味。さまざまな部位の豚肉、ラルデッリと呼ばれる立方体の脂を塩、黒胡椒、ピスタチオ、砂糖、各種スパイスなどで調味、独特の窯で加熱して作るが大きさは500gから100kgを超えるものまでさまざま。巨大なモルタデッラは豚の腸でなく食品用合成繊維を使用している。モルタデッラが大量生産されるようになったのは1376年、ボローニャに塩漬職人組合が誕生して以降。ちなみに組合の紋章はすりこぎだった。歴史上最古のレシピは1644年ヴィンチェンツォ・タナラが書いた経済の論文で、上記調味料の他にシナモン、ナツメグ、クローブ、マルヴァジーア種のワインなど、その分量まで正確に記されている。1661年にはジロラモ・ファルネーゼ枢機卿が豚肉以外の肉を使ってモルタデッラを作るのを禁止した。これは現在EUが規定するDOP、IGPの先駆けとなる歴史上初めて食品の生産規定を定めた法令とされている。滑らかで舌触りがよく、溶けるような食感とマイルドな味付けは子供から大人まで、全ての人に好まれ、そのまま食べるだけでなく多くの伝統料理に使用される食材としても活躍している。トルテッリーニなどの詰め物パスタの具としてモルテデッラは欠かせないし、エミリア・ロマーニャ州では永世定番のパニーノの具である。フリットにしても美味しく、世界一のレストラン「オステリア・フランチェスカーナ」のシェフ、マッシモ・ボットゥーラは「モルタデッラのスプーマ」を考案し、食材としてのモルタデッラの可能性を切り開いた。

マッシモ・ボットゥーラとモルタデッラ

World 50 Best2016年度世界1位「オステリア・フランチェスカーナ」のシェフ、マッシモ・ボットゥーラはエミリア・ロマーニャ州のモデナ出身。地元食材に対する知識とリスペクトは誰もよりも深く「プロシュート、クラテッロ、パンチェッタ、モルタデッラ、サラミ、チッチョリはわたしたちの宝だ」という。しかし伝統的な料理や食材をまず、批判の目を持ち、距離を置いて見つめ直し、新たなレシピを生み出すことこそがボットゥーラの真骨頂である。2001年に発表した「モルタデッラのスプーマ」は、ボットゥーラが子供の頃いつも食べていたモルタデッラのパニーノの再解釈であり、モルタデッラの余分な脂肪分をとりのぞき、軽快かつ純粋なエッセンスのみを残した。  

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