イタリア・サルーミ図鑑6 Bresaola, Porchetta

ブレザオラ スイス国境に近い山あいで生まれた牛肉のサルーミ

ブレザオラ・ディ・ヴァルテッリーナIGPは、ミラノの北東約100km、スイス国境に近いヴァルテッリーナ渓谷で作られる牛肉の生ハムである。大抵のサルーミは豚肉から作られるがブレザオラ・ディ・ヴァルテッリーナは牛腿肉を固まり(ペッツォ・インテーロ)のまま塩胡椒やワイン、砂糖、地元産のハーブやスパイスなどで調味したあと、牛の腸に詰めて3ケ月熟成させる。つまりペッツォ・インテーロでありインサッカーティという非常にユニークなサルーミである。さまざまなスパイスと熟成した牛肉が生み出す独特の芳香と、ドライな舌触りはミラノのトラットリアでは前菜の定番。パニーノの具としてもよく使われる。IGPではないブレザオラには馬肉や鹿肉、豚肉を使ったものもある。歴史上最初の記録は15世紀になるがそれよりもはるか前からヴァルテッリーナ渓谷の農家では、各家庭で自家消費用に作られていた。19世紀になってから本格的に生産されるようになり、スイスを中心とした外国に輸出されるようになった。その語源は「ブリーザ(牛のリンパ節)のように塩をする」という「Sala come Brisa」に由来するが。これは当時の肉の保存法は非常に塩が強かったため。また、山あいの暮らしに欠かせない「ブラーザ(薪)」に由来するという説もある。

ポルケッタ 豚一頭丸ごとローストした祝祭的食材

ポルケッタとは中部イタリアで作られる、骨を外した豚の丸焼きのこと。豚バラ肉などを使った小型のものは本来ポルケッタとは呼べない。ローマ近郊アリッチャはポルケッタの聖地とされ、イタリアで唯一のポルケッタ・ディ・アリッチャIGPを生産する。その紀元はローマ時代、ジュピター神殿に生け贄の豚を供えていた司祭たちが、夏の別荘としてアリッチャに住むようになったことに始まる。生後1年未満、100kg程度の豚を開いて熟練の技術で骨を外し、塩胡椒、ローズマリー、ニンニクで調味し、5時間程度かけて焼き上げる。伝統的には炭火で焼いていたがそれでは火が圴一に回らないため現在は専用のステンレスのオーブンを使用している。南トスカーナからローマ周辺に欠けてはローズマリーが使われるがウンブリアやマルケなどではフェンネルが使われることが大きな特徴のひとつ。焼き立てが一番美味しいが冷めても2週間はその独特の芳香が持つことから、50年代以降ポルケッタは屋台で売るパニーノの具として定番となった。祭りやイベント会場等ではポルケッタのパニーノは定番である。アリッチャ近郊にパンの聖地と呼ばれるジェンツァーノという町がありパーネ・ディ・ジェンツァーノIGPを生産しているが、アリッチャのポルケッタとジェンツァーノのパンを使ったパニーノは、その最高峰とされている。  

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