マクドナルドとDOP & IGP食品のコラボ再び
フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ駅前にあるマクドナルドの前を通りがかった時のことだ。普段はあまり気にせず通り過ぎるのだが、通りがけにちらりと店内をのぞいてみると最近TVでもよく見かけるイタリア系アメリカ人ジョー・バスティアニッチとの2019コラボ・ハンバーガー発売中、とある。ジョー・バスティアニッチといえば現在はTV番組「Master Chef」でご意見役として登場するなどイタリア料理界に積極的に進出。その存在感をますます強めているが、本来はNYベースのアメリカ人で以前書いたようにマリオ・バターリ、リディア・バスティアニッチとともにNYイータリーを経営。フリウリにもワイナリーを所有し最近ではEATALYでも販売している。ところが以前、アルコール製造者は自ら販売してはならないという、禁酒法時代の名残ともいえるNY州法に抵触して高額な罰金を課せられ、8ケ月間ワイン販売を停止させられるというトラブルもあった。しかし2016年アマトリーチェ周辺で起きたイタリア中部大震災の際にはいち早く連帯を表明。NYイータリーでは震災特後から義援金を募る活動を始めた篤志家でもある。 そこで今回のコラボ・バーガーについて調べてみた。ジョー・バスティアニッチとマクドナルド・イタリアのコラボは今年の1月から始まり、DOP、IDP食品を使い、肉類も100%イタリア産という「メイド・イン・イタリー」をうたった高級路線に踏み出している。マクドナルド・イタリアのシェフとのコラボは今に始まったことでなく、近代イタリア料理の父である故グアルティエロ・マルケージも2011年にマクドナルドとコラボ。マルケージのハンバーガーが店頭に並んだこともあったが、この時はイタリア料理界における神的存在のマルケージへの冒涜との批判がすさまじく、商品のラインナップから早々に姿を消した。続く2012年にはDOP食材とコラボしたMcitaly発売。この時もハンバーガーに使用されたDOPモンテ・イブレイの生産者が実名で抗議文を表明するなど、よくも悪くもイタリアにおけるマクドナルドのコラボ・バーガーは、発売されるたびに話題となってきたのだ。 さて、今回ジョー・バスティアニッチがプロデュースした「My Selection 2019」はプレミアム・ハンバーガー3種類。まずMy Selection BBQ「マイ・セレクション・バーベキュー」は100%イタリア産牛肉180gを使用、トロペアのタマネギIGP、アチェート・バルサミコ・ディ・モデナIGP、ベーコン、ゴーダチーズ、コールスロー、ケシの実とゴマ入りバンズを使用している。My Selection Smoky「マイ・セレクション・スモーキー」は同じく100%イタリア産牛肉180gに100%イタリア産牛乳を使ったスカモルツァ・アフミカータとベーコン、トマト、マスタード、タマネギ、ゴマ入りバンズ。My Selection Chicken「マイ・セレクション・チキン」は100%イタリア産鶏胸肉のカツレツにスペック・アルト・アディジェDOP、フォンティーナDOP、ポルチーニ・ソース、トマト、レタス、ケシの実とゴマ入りバンズ。ちなみに値段はというとそれぞれ5.80ユーロ(約750円)。これは街中で売られているイタリア人の日常食パニーノに比べても倍近い値段だ。 果たして食べる価値があるかどうかはそれぞれの判断にまかせるが、とあるデータによれば日本の旅行者がイタリア旅行中で最もカード使用回数が多いレストランがマクドナルドだという。それは欧米のマクドナルドではすでに主流のタッチパネルで商品を選び、カードで支払いを済ませてカウンターで受け取るセルフ方式が確立しているからであり、旅行者にとってはわざわざカウンターで言葉を発して注文しなくてもいいので楽だから、という構図が垣間見える。しかしわざわざイタリアに来ているのだから、レストランで料理のイタリア語をガイドブック片手でもなんとか覚え、発音してこそ旅の醍醐味。料理に対する理解や愛情が深まると思うのだが、いまの旅行者はそういうことも面倒臭いと思うのだろうか?SAPORITAをもっと見る
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