ヴェネツィア酒場紀行1 カンティーナ・ド・モーリCantina Do Mori
ヴェネツィア名物というとバーカロと呼ばれる地元の酒場だ。特にリアルト橋のそばにあるペスケリア市場周辺には古い名物バーカロがひしめいている。中でもヴェネツィアを訪れたならやはり一度は足を踏み入れておきたいのが1467年創業の老舗中の老舗「カンティーナ・ド・モーリ Cantina Do Mori」だろう。初めて訪れたのはもう20年以上前になるが「イタリアの老舗料理店」で取材に訪れた2006年1月には3日間で5回通い、チケーティもワインも徹底的に食べ、飲んで味わい尽くしたことがある。店のストーリーなど詳細は「イタリアの老舗料理店」に書いてあるので、ご興味ある方はそちらをお読みいただきたい。それ以来幾度となく訪れているが、来るたびになんとなく古巣に帰って来たような気になるのは「ド・モーリ」が持つ独特の空気感がなせるわざだろう。

Baccalà mantecato

カウンターに立つのは10年以上前から変わらないルーディ。まずプロセッコを飲み、バッカラ・マンテカートのクロスティーニ、茹でたタコ「ピオーヴラ」、バーカロの定番ポルペッティーネのトマトソース「ウミド」。続いてリボッラ・ジャッラとアリーチのマリネのクロスティーニ。ガラスのショーケースにはこうしたチケーティと呼ばれるつまみとフランコボッロと呼ばれるこれまた一口サイズのミニ・サンドイッチが並んでいる。こうしたチケーティをひとつふたつとつまみながら地元のワインをちびちび立ち飲みするのが実に楽しいのだ。正直いって「ド・モーリ」のチケーティは特別美味しいというわけではなく、バッカラもアリーチもスーパーで買って来たような味なのだが、雰囲気のおかげもあってやはりヴェネツィア来たなら一度は立ち寄らないと落ち着かない。 しかしワインの品揃えはこれぞ北イタリアの酒場、というものがあり昔から変わらない手書きの黒板にはこの日もSoave,Verdiso,Prosecco Naturale,Prosecco Extra,Muller Thurgau,Ribolla ,Arneisなどなど白ワイン23種類、価格は3.50〜5.00ユーロ。赤ワインもRefosco,Valpolicella,Amaroneなどヴェネト産を中心に22種類、2.50ユーロ〜各種ある。ガラスカウンターに並んだチケーティも、サーブするときは温めてくれるといいのだがと思いつつも、ポルペッティーネも含め冬でもいつでも冷たいのがこの店の流儀なのだろう。「ド・モーリ」では2杯飲んで次の店に向かう。こうしたはしご酒がヴェネツィアは楽しいのであって、観光に走るか酒場を巡るかでヴェネツィアを見る視点は大いに違って来る。

Alici marinate


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