ヴェネツィア酒場紀行2 バンコジーロ Bancogiroとイン・サオール
Baccalà Mantecato ヴェネツィアでチケーティ目当てにバーカロを回るなら、店の入り口にカウンターのあるオステリア、あるいはトラットリアがいいと思う。それは店には厨房設備があるのか?それともトースターしかないのか?という問題で、当然厨房設備があるバーカロのほうがチケーティの仕込みや魚介類などの食材選びにも一日の長があるからだ。 「オステリア・バンコジーロ」はいわゆるオステリア=居酒屋、ではなくワインや食材にも気を使い、料理も郷土料理ベースに少しアレンジを加える、いまでいう「ネオ・ビストロ」の範疇に入るオステリアだ。それだけに入り口にあるチケーティは月並みなものではなくひとつひとつ気が利いている。定番のバッカラ・マンテカートはきちんと自家製で美味しいし濃厚、車海老を一度フリットにしてから甘酢に漬けた「マッツァンコッレ・イン・サオール」は濃いめの味付けで酒のあてとしてはたまらない。同じくイワシを使った南蛮漬け「サルデ・イン・サオール」も同じく味付けは濃いめ。パン代わりのポレンタに柔らかく茹でたタコと溶かしバター、というのも白ワインに合う味だ。 ちなみにこの「イン・サオール」とは北イタリアによく見られる魚介のマリネ方法で、イワシなどの青魚を一度揚げてから砂糖、ヴィネガー、唐辛子、時には炒めたタマネギや干しぶどう、松の実、ローリエなどで味付けし、一晩経ったぐらいが美味しいとされる。「エスカベーチェ」あるいは「スカベーチェ」「イン・カルピオーネ」など地方によって呼び方も異なるがヴェネト地方で使われる「イン・サオール」の「サオール」とは「サポーレ=味」の意味で、つまり「味をつけた」という意味である。本来は漁師が売れ残ったイワシを濃いめに味付けして、保存しておくための料理で、クチーナ・ポーヴェラの代表格だ。しかし倹約は発明の母、といでもいうべきかクチーナ・ポーヴェラこそが本当に美味しい料理だといつも思う。 Mazzancolle in saor, Polipo con polenta Sarde in saor
Bancogiro
Campo S.Giacometto, San Polo,VENEZIA
Tel+39-041-5232061

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