パルマ郊外の名店トリ・シオケットゥ Tri Siochett
パルマ郊外の街道筋にある「トリ・シオケットゥ Tri Siochett」は古き良き田舎のオステリアそのものだ。オープンしたのは16年前というから実はそれほど古くはないのだが、店に漂う空気感はずっと以前から街道筋を行き交う旅人たちを迎えてきた料理旅館、そんな雰囲気があるのだ。入り口はこじんまりとした旅籠屋、しかし奥に入ると実は200席と広く生ハムやサラミ類が満載のカウンターとベルケルのスライサーがあるのはパルマのレストランならではだ。

Spalla cruda di Palasone DOP スパッラ・クルーダ・ディ・パラソーネDOP

クラテッロが生ハムの王様なら、スパッラ・クルーダは「生ハムの女王」とも称される。これは豚の前足肉を塩漬けした後に膀胱につめて熟成させた生ハムだ。通常骨を外して成形したものがほとんどだがまれに骨つきのスパッラ・クルーダもあるという。美しピンク色をした前足はもも肉に比べると脂が少なく、よりしまった感があるが上品、可憐、若い熟成香が素晴らしく、滑らかな舌溶けもよい。

Tagliatelle con ragu di fagiano e porcini secchi 雉のラグーと乾燥ポルチーニのタリアテッレ

Tortelli di zucca カボチャのトルテッリ

Padellata di Anatra al forno con patate

Vecchia alla Parmigiana パルマの老婦人

セコンドで秀逸だったのは「Vecchia alla Parmigiana パルマの老婦人」という料理。メニューを見てこれはどんな料理なのかとたずねてみると「オーナーの母上が昔よく作ってれた料理で、豚のもも肉、プロシュット、ジャガイモや野菜などを煮込んだものです」という。果たして登場したそれは熱々の煮込み料理ウミド。パルマらしくプロシュットの切り落としを使った豚肉のラグーに、ジャガイモやタマネギ、ペペローニ、トマトを煮込んだものでまさに手作り家庭料理そのもの。やや濃いめの味付けはパンと一緒に食べるとちょうどよく、これさえあれば寒い冬が乗り切れる。ネーミングセンスのよさもあってか、思わず涙が溢れるような味だった。パルマ中心部からはタクシーで10分ほどだが田舎感がたっぷり味わえるし、なによりも料理がどれも素晴らしく、また値段もリーズナブル。郷土料理を食べるなら都市部よりも田舎だと旅するたびにいつも思うが、エミリア地方に関していうならまさにその金言が実に見事にあてはまるのだ。 www.itrisiochett.it/il-ristorante  

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