ウディネ酒場巡りで「タユットゥ Tajut」を知る
スローフード協会が発行する「オステリエ・ディタリア Osterie d’Italia」は郷土料理を出すオステリアはスローフード協会が指定する保護対象食品プレシディオなどを扱う店を取り上げたレストランガイドだが、実はよく読んでみると各街で酒飲みに特化した独特の切り口で居酒屋文化を紹介しているのだ。例えば近年は減少傾向にあるとはいえ、ヴェネツィアならばやはりバーカロ。トリエステならブッフェ、ヴェローナならゴティーノという具合に所変われば品変わる、各街ごとに独自のスタイルがある居酒屋が存在するのも北イタリアの楽しみならだろう。 フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州はイタリアの中でも優秀な白ワインを生み出す街だが、その州都ウディネには地元のワインをグラスで楽しむ「タユットゥ Tajut」という文化が存在する。これはTaglio=タッリオという標準イタリア語のフリウリ弁なのだが、その語源はグラスに刻まれたワインを注ぐ線「Taglio」に由来するという説と、ハウスワイン=Vino del taglioから来たという説がある。しかしここはワインをグラスの縁ぎりぎりまで注いでくれるような、気軽なハウスワインを楽しむ前者の説を強く推したい。そこで今回訪れたウディネでは「タユットゥ Tajut」目当てにオステリアを3軒はしごしてみた。Grappolo d’Oro グラッポロ・ドーロ
Via Bonaldo Stringher 5, 33100 Udine, Italia
ウディネの中心部ドゥオモ広場からほど近い、それはそれはシブイ酒場。雰囲気あるすりガラスの扉を押して入り、Bianco Friulanoと厚切りのプロシュット・クルード・ディ・サン・ダニエレ。そしてなぜか中部イタリア風にローズマリーとセージが効いたポルケッタ。他に客もなく、店内にはゲームコーナーもある空間。こちらは1杯だけ飲んで早々に立ち去る。
Osteria Barnabiti オステリア・バルナビーティ
グラスワインやつまみが充実したとても雰囲気のよいオステリア。ワンオペの店主もプロシュットを切り、料理を運び、ワインを説明しては雪と八面六臂の大活躍なのに忙しさを微塵にもみせない。Friulanoは清潔感あふれるミネラルとフレッシュな酸。Ribolla Giallaはよりドライかつややアロマティック。Schipettinoは一杯目はブショネだったので交換してもらうと、酸はおだやかで甘みを感じるふくよかさ。つまみはDOKのプロシュット・コット、これにはホーシュラディッシュ=クレンをたっぷりかけた食べる。温めてから出してくれたプロシュット・コットは、フリウリならではのしっとりとした味わい。同じくDOKのプロシュット・クルード・ディ・サン・ダニエレDOP。極薄、若い熟成だけれど極上品。パルマよりはやや塩が強め。そしてフリーコはきちんと自家製でジャガイモ、スペック、チーズ(ラッテリア?)を混ぜたからオーブン焼き、添えられたポレンタとともに熱々で寒い時期に食べるとなんともいえない。
Hosteria al Fari Vecjo
本日の締め3件目のオステリアは本来レストランなのだが立ち飲みコーナーもある。MerlotとMarbec飲みつつ、突き出しには一口サイズのフリッタータは玉子とスペック、チーズで水分多めのしっとりとした仕上がり。フリウリ産のチーズ、ラッテリアはかなり塩きつめだが熟成香はマイルド。同じくラッテリア・ストラヴェッキオは濃厚な熟成香はパルミジャーノを思わせる。でも旨味、奥深さはそこまでではなく淡白。
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