モデナの市場前食堂アルディーナ
初めて「アルディーナ Aldina」を訪れたのは「イタリアの市場を食べ歩く」の取材でイタリア中の市場を飛び回っていた2002年のこと。北イタリアにある屋内市場の中では最も美しい市場のひとつである、アルビネッリ市場正面にあることから、市場巡りの後に昼食を楽しんだのが最初の出会いだ。というのも当時(現在も)スローフード協会が発行するガイドブック「オステリア・ディタリア Osterie d’Italia」に掲載されていたことがきっかけだった。その当時はまだTripAdvisorなどのネット情報も皆無で頼りになる情報といえばミシュラン、ガンベロ・ロッソ、そしてオステリエ・ディタリア。特に郷土料理を出すオステリアおよびトラットリア情報としてはオステリア・ディタリアが秀逸で当時はかなり参考にしていたのも懐かしい思い出だ。「アルディーナ」の創業は1973年、この店はイタリアにしては珍しく階段をのぼった2階にある。 週末の金、土以外は昼のみ営業という昔懐かしいトラットリアのスタイルをつらぬく「アルディーナ」で食べられるのは徹頭徹尾、首尾一貫した伝統的モデナ料理である。しかもテーブルに着くのは圧倒的に地元の老若男女。ある日のメニューはこんな感じだった。
Antipasto Toscano

Minestre e Zuppe;
 Minestra di farro e fagioli
 Ribollita
 Pasta e fagioli
 Zuppa Lomabarda
 Farinata gialla con cavolo nero
 Carabaccia

Pasta Fabbri(=Pastasciuta);
 Al sugo
 Alla Carrettiera
 Al pomodoro
 Al pollo scappato

Pasta fresca;
 al giorno(日替わり)

Arrosti;
 Roast Beef
 Pollo
 Arsita di maiale
 Prosciutto
 Fegatelli di maiale alla rete

Umidi, Stracotti, Stufati;
 Stracotto di manzo
 Peposo di razza Calvana
 Trippa alla Fiorentina
 Francessina con le cipolle di Certaldo
 Spezzattino alla Maremmana

一目見ればわかるかと思うが、実は伝統的モデナ料理よりもトスカーナ料理が多いのだ。意外に思えるかもしれないが、実はモデナとはイタリア地図を見て見ると国道12号線をまっすぐ南下するとアペニン山脈を超えてルッカへと着く。以前から「アルディーナ」の厨房は歴史的ライバル都市ボローニャよりも、メンタル的にも料理文化的にもトスカーナ志向のようだ。     日替わりの手打ちパスタはカメリエーレが口頭で伝えてくれるが、やはり食べたいのは手打ちのタリアテッレ・アル・ラグー(ボロニェーゼ、とは呼ばない)。スープ仕立てのパスタ・エ・ファジョーリのような家庭料理が食べられるのも貴重だし、なかなかお目にかかれないレア・パスタ、グラミーニャがあるのもさすがエミリア地方のトラットリアだ。セコンドは煮込み料理ならジャガイモと牛スネ肉をじっくりと煮込んだ熱々のストラコット・ディ・マンツォが美味しかった。しかも「トラットリア・アルディーナ」は年配の方や学生、地元労働者が多いのもうなずけるが値段が非常にリーズナブルなのだ。こうした伝統料理を2〜3皿とり、ランブルスコ・ソルバーラあるいはグラスパロッサを1本開けたとしても、会計時にはその安さに驚くこと請け合い。なによりも毎日食べ続けても飽きない、そして飽きさせない、一朝一夕には真似できない家庭料理の原点がここにはある。それは40年以上同じ料理を作り続け、地元客をもてなしてきたというプライドのみがなせるわざ。誇り高き伝統料理の名店としての空気が漂う「トラットリア・アルディーナ」を体験せずにエミリア料理は語れない。  
Via Albinelli 40 MODENA
tel+39-059-236106
 
 

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