カターニア「カヴァリエレ」で馬肉を喰らう
イタリア北部、かつてゴート族やロンゴバルド族が侵攻した地域には馬肉食文化が残っているが、いずれも干し肉や煮込みなど。しかしシチリア東部のカターニアには馬肉をグリルして豪快に食べるという文化が残っている。その聖地ともいえるのがあまり治安はよろしくないといわれているプレビシート広場周辺。わい雑な円形広場には路上で馬肉を焼く屋台が立ち並び、遠くからでもモウモウと煙がたなびく様は、ペスケリア市場に代表される魚介料理とは対極にある稀有な肉食文化の象徴だ。 カターニア中心部にある「カヴァリエレ」はその名の通り馬肉料理がメインのトラットリアだ。料理人であるフランチェスコと肉屋出身のリッカルドがコンビを組み、その奥方であるアントネッラとチンツィアを巻き込んでチームが完成。店に入るとすぐ左手では次から次へと肉や魚がグリルされている光景が見える。ハウスワイン飲みつつまずはカポナータとチコリアのソテー、続いて登場したのが馬フィレ肉のグリルと、馬肉のポルペッテ。色は鮮やかな真紅、脂は皆無で水分も多い馬肉は陳腐な表現で言うならば臭みは全くなく、非常に上質な牛フィレ肉を思わせる滑らかさ。中にピスタチオのペーストを仕込んだポルペッテも同じくグリル、こちらはさらに柔らかくジューシーで牛100%のハンバーグを想像してもらえれば近いが、肉質は全く硬くなくてとろけるような柔らかさ。さらにグリル料理から豚肉を使ったインヴォルティーニを頼む。詰め物はパン粉に少量のトマトソース、松の実と干しぶどう。この詰め物が豚の脂を吸いこみ、肉と一体となってとろけるその質感はたまらない。極論すればこの詰め物=リピエノが食べたいために、インヴォルティーニを注文するといってもいい。 カターニアではこうした馬肉のグリルやポルペッテをパニーノにして食べさせてくれる屋台もあるが、いずれも中心からやや離れていたり治安があまりよろしくない場所にあったりして難易度は少々高い。この夜も「カヴァリエレ」は20時を過ぎた頃はすでに満席。市内中心部にあるので足の便も良く、ディープ・シチリア料理嗜好のカターニア市民のみならず、旅人でも比較的気軽に馬肉料理を堪能できるはずだ。Via Paternò 11, 95131 Catania, Sicilia, Italia +39 095 310491www.trattoriadelcavaliere.com
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