アブルッツォワイン紀行4 標高600mで食べるコンチェッタのキタッラ
キタッラとはイタリア語でギターを意味するが、イタリア料理の世界ではギターのように弦を張り巡らせたパスタ・カッターのこと。あるいはその道具を用いて主に中南部イタリア、特にアブルッツォで作られるパスタのことだ。正式にはスパゲッティ・アッラ・キタッラと呼ばれるがモリーゼではクリオーリ Crioli、ローマではTonnarelli、プーリアではTroccoliと異母兄弟的パスタがあちこちに点在している。特にTeramoの郷土料理である Pallottineはスパゲッティ・アッラ・キタッラにトマトソースで煮たポルペッティーネをあえたもので、アメリカで人気のスパゲッティ・ミートボールの原型ではないかとも言われている。 今回キタッラ作りを披露してくれたのは、標高600m、人口900人の小村プレトーロ Pretoroにあるリストランテ・ラ・トッレ Ristorante La Torreの女性オーナーシェフ、コンチェッタ・ディンノチェンツォ Concetta d’Innocenzo。セモリナ粉100gに卵黄ひとつの割合で生地を練った後、十分給水させるためにボウルで蓋をして生地を15分ほど休ませる。その間セモリナ粉とマッシュポテトでニョッキ作りのご指導もいただいた。生地が十分水分を吸って表面が滑らかになったら今度は麺棒を使って薄く伸ばした後、10cm角ほどに切ってからキタッラに乗せる。最初は麺棒で生地を弦に押し付けるようにし、生地を弦に固定したら今度は綿棒を前後に動かしながら押してカットする。カットされたパスタは台の下部に落ちてくるのだが、水平なのが昔風のキタッラ、現代のものは改良されて下段が斜めになっており、パスタが自然と滑り落ちてくるようになっているそうだ。できあがったパスタを集めてくっつかないように大皿に広げておけば準備は完了。 この日のスパゲッティ・アッラ・キタッラのソースがシンプルにトマトを煮込んだスーゴ・ディ・ポモドーロ。ニョッキはアスパラガスとファーヴェのソースだった。完熟濃厚トマトソースの旨さはもとより、パスタの食感は軟質小麦を使った同型のタリエリーニなどの滑らかな舌触りとはことなり、硬質小麦を使用しているため噛みごたえがあり、ざらつくようで男性的。見た目とは裏腹に上品というより田舎の十割蕎麦のような、とにかく食べ応えのあるパスタだ。 これにあわせたのがキエティ県、標高432m、人口3800人のオルソーニャ Orsognaにあるビオディナミコ・ワイナリー、カンティーナ・オルソーニャ Cantina Orsognaのワイン、ルナリア Lunaria。Malvasia Spumante “Le Belle”, Cerasuolo d’Abruzzo “Pettirosce”, Montepulciano d’Abruzzo “Coste di Moro”, Primitivo “Ruminat”, ビオディナミコ感が前面に出た一連のレアワインはアブルッツォに住む動物たちをエチケットにしており、もしアブルッツォで見つけたらジャケ買いしたくなるかもしれない。 Ristorante La Torre www.torredipretoro.com Via Rua di Livio 1, Pretoro (CH) Tel0871-898400 Cantina Orsogna / Lunaria www.lunaria.bio Via Ortonese, 29  Orsogna (CH) Tel0871-86321

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