トスカーナの島々の美食巡り攻略本
トスカーナと聞いてイメージするのは、フィレンツェやピサ、シエナ、キャンティ...とどれも内陸にある。が、しかし、トスカーナにも海があり、陸から見えるところに島が浮かんでいる。海岸線と仏領コルシカ島の間に点在するエルバ、ジッリオ、カプライアとそのほかの小さな島を含めて、トスカーノ群島(アルチペラゴ・トスカーノ)と呼ぶ。このほど、群島を代表してこの三つの島の食のスポットを紹介するガイドブックが出版された。題して「Le Mappe del Gusto」、味の地図という意味である。 イタリア語で島を表すイゾラという言葉には、地形としての島という意味と、時間や人から置き去りにされた、ともすれば忘れ去られたという意味をも持つ。三つの島はどれも陸からそれほど離れていない上、コルシカ島にも近い。つまり、置き去りにされることはさほどなかったと考えられるが、それは移動手段や通信手段の発達したつい最近の話であり、長い歴史の流れの中では島の中で独自に変化発展し、守られてきたものの方が多い。古くはエトルリア、そしてコルシカ、ジェノヴァ、ナポリ、シチリアなどから、時折り持ち込まれる風習や文化を取り込みながら、島独特の食として熟成、発酵を重ねてきたのである。 もちろん、自然の影響も抜きには語れない。それどころか、島それぞれの気候風土が食を作り上げてきた最大の功労者といってもいいだろう。三つの島は互いに近くても異なる気候と土壌を持ち、それぞれに住む人々によって島ごとの作物が作られ、料理が編み出されてきたのだ。 この本では、自然、生態系、歴史を軸に、レストランや生産者を紹介している。著者はエルバ島在住の食ジャーナリストで、トスカーナ群島国立自然公園とカプライア市の後援を受けて出版。1996年に国立自然保護区に指定され、2003年にユネスコのMan and the Biosphere(人間と生物圏)計画のBiosphere Reserves(日本ではユネスコエコパークと呼ぶ)に認定されたトスカーナ群島のユニークな生態系を食を通じて知ってもらうというのが、同書の目的だ。文字のみの二色刷りだが、シンプルで見やすいデザイン、文庫本よりほんの少し大きいくらいの手頃なサイズ。見開きで一件紹介、左ページはイタリア語で右ページは英語の二表記なので、イタリア語に不慣れでも問題なし。ちょっと目先を変えたトスカーナの旅を考えている人にはもちろんのこと、なかなかそこまでは行けないけれど、旅妄想を膨らませたい人にもお勧めしたい一冊である。   Le Mappe del Gusto   Nuova editoriale Florence Press刊

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