日本のイタリアンを旅する03 名古屋エノテカ・ピンキオーリ
過日、パスタ・マンチーニのイベント「トレッビアトゥーラ」に参加した際、フィレンツェの3つ星「エノテカ・ピンキオーリ」シェフ、リッカルド・モンコと話をした。「名古屋のエノテカ・ピンキオーリが一つ星をとったの知ってるか?」というのでそのニュースはすでに知っていると答えると非常に満足そうな表情を浮かべたのが印象的だった。「エノテカ・ピンキオーリ」といえば本家フィレンツェで長年3つ星を維持し、オーナーのジョルジョ・ピンキオーリ氏のワイン・コレクションは2000種類6万本を誇り、イタリア一といわれている名門だ。 また古いイタリア料理ファンには銀座にあった同名の日本店を思い浮かべる人もいるかもしれない。1992年銀座コア7Fにオープンした同店は当時のバブル景気もあり、銀座の最高級イタリアンとして大いに人気を得たが2010年に閉店。「エノテカ・ピンキオーリ」の閉店は2003年にオープンした六本木ヒルズのオープニングラインナップだった「カランドリーノ」「サドレル」の閉店と合わせ、日本には高級イタリア料理は根付かないのか、と星付きイタリア料理店総撤退を感じさせるなんともく暗いニュースだった。 それだけに今年発売になった「ミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019特別版」で名古屋の「エノテカ・ピンキオーリ」が一つ星を獲得したことはピンキオーリ・ファミリーにとっては相当嬉しいできごとだったのだろう。リッカルド本人から「日本に戻るなら、その時期ジョルジョも日本にいるので是非名古屋に寄ってくれ」と言ってもらったこともあり、京都へ向かう途中名古屋で途中下車。「エノテカ・ピンキオーリ」は名古屋駅から直結しているミッドランドスクエア42Fという、名古屋駅前を見下ろすロケーションにある。店に入るやいなや、青いスーツに身を包んだジョルジョ・ピンキオーリと目が合い、挨拶を交わす。天井が非常に高いレストランの角のテーブルに案内してもらい「エノテカ・ピンキオーリ」の食事が始まった。

Cannolicchio, zucchini, gelato di rabarbao マテ貝、ズッキーニ、ルバーブのジェラート

夏らしくさっぱりとした酸味が心地よい冷たいアミューズ。マテ貝とズッキーニのピューレ、マス子、ルバーブのジェラート、ミント。

Kinmedai, melanzana, capperi, finocchio 金目鯛、ナスとケイパー、フィノッキオ

最初の前菜は熟成金目鯛にナスをローストしてほぐしたもの、ケイパーとフィノッキ。寿司屋を思わせる熟成金目鯛の切り身に南イタリア的要素を組み合わせたもの。ワインは本家エノテカ・ピンキオーリのハウス白ワインである、Poggio Scalette門外不出の白ワインRichiari 2014。シャルドネ、ピノ・グリージョ、ソーヴィニヨン・ブランにGAJAのGAJA REYを思わせるバリック。これはPoggio Scaletteを訪問しても「ピンキオーリで飲んでくれ」と言われ試飲させてもらえないエノテカ・ピンキオーリ独占白ワイン。ジョルジョ・ピンキオーリ氏がテーブルを訪れては世間話をするのだが、今回日本ではこんどう、鮨さいとう、龍吟、HAJIMEに行くという健啖家ぶり。

Spatola gratinata all’olio di oliva e prezzemolo con crema di finocchio e salsa di cacciucco ridotto タチウオ レモンとハーブ ウイキョウのクレーマ 魚介のソース

シチリア風カジキのインヴォルティーニが多く登場するだがこの日はタチウオ。これにフィノッキオのクレーマやモッリーカをあわせたシチリア風料理。これはパレルモの老舗「ピッコロ・ナポリ」のスペシャリティでもあるが、日本の太刀魚もとても美味しかった。

Spaghetti alla chitarra con ragù di polpo, crema di fagiolini e briciole di pane all’aglio スパゲッティ・アッラ・キタッラ タコのラグー 白インゲン豆のクレーマ ニンニク風味のパンのブリチョーレ

マダコのミンチのラグーにイカスミ、白インゲン豆のクレーマを敷き詰め、スパゲッティ・アッラ・キタッラというよりはタリアテッレ幅の手打ちパスタにこれもシチリア風モッリーカ。

Garganelli con ragù di coniglio ウサギのラグーのガルガネッリ

パスタもう一種は手打ちのガルガネッロ。これは手打ち感が出ていてとてもよかった。そしてビアンコのウサギのラグー。南イタリア風よりも中北部料理のほうがより「エノテカ・ピンキオーリ」らしさが出ている様に思う。ワインは再びトスカーナからGuando Al Tasso MATAROCCHIO 2011。カベルネ・フラン100%、ロワールを思わせるニュアンス。ちなみにワインリストを見てみるとこのワインはボトルで85,000円、前者のRICHIARIは23,000円。ワインペアリングは25,000円〜80,000円の超絶ペアリングまである。

Petto di anatra, cipolla rossa rosolata, zenzero novello in agrodolce e marmellata di arancia 鴨胸肉と赤玉ネギ 甘酸っぱい新生姜とオレンジのマルメッラータ

シャラン鴨の胸肉にオレンジの甘いマルメッラータというクラシックなコンビネーション。赤玉ねぎのローストとエシャロット。

Granita di ribes e succo di melone, fantasia di cioccolato 赤すぐりのグラニータとメロンのジュース、チョコレートのファンタジー

最後は甘いグラニータにチョコレートを使ったドルチェ。スポンジ、ムース、ジェラート、クランブル、パウダーとこのドルチェだけ他の料理に比べるとテクニック的に突出していて現代ガストロノミー的だった。広島産のチーズ、ヴェネトのヤギ、アオスタのタレッジョ

ランチの後にじっくりと話を聞いたジョルジョ・ピンキオーリ氏の独占インタビューは次回に。
ENOTECA PINCHIORRI NAGOYA 
エノテカ・ピンキオーリ名古屋
ep-nagoya.jp
愛知県名古屋市中村区名駅4丁目7番1号
ミッドランド スクエア42階
TEL: +81(0)52-527-8831


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