日本のイタリアンを旅する04 ALTER EGO
「Alter Ego アルテレーゴ」とはラテン語で「もうひとつの人格」という意味だが、イタリア料理の世界においては、今年2月神保町にOPENした徳吉洋二シェフの「分身」つまり、ミラノの一つ星「TOKUYOSHI」の東京店のこと。ミラノ「TOKUYOSHI」で徳吉シェフの右腕として活躍し、TOKUYOSHI料理を最も知る平山秀仁氏が日本に帰国するタイミングにあわせ、徳吉シェフが2号店を東京にOPEN、平山氏に店を任せたのである。7月29日、30日は徳吉シェフが日本に一時帰国、そのタイミングにあわせて3シェフによる4 handsならぬなんとも豪華な6 handsイベントが行われた。 参加したのはまずホストであるミラノ一つ星「TOKUYOSHI」オーナーシェフ徳吉洋二氏、香港の二つ星「Ta Vie 旅」佐藤秀明シェフ、パリの「Dersou デルス」「Cheval d’or シュヴァルドー」関根拓シェフの3人。ワインは「ORGAN / UGUISU」紺野真氏のセレクトという豪華メンバー。今回は各シェフが1皿ずつ用意する30日のランチコース6000円(飲み物別)に参加した。ちなみにディナーは各シェフが2皿ずつ作る30000円(料理+ペアリング)のコースだった。 徳吉シェフに関しては過去に何度も書いているのでもはや説明は不要だと思うが、イタリアにおけるクリエイティヴ日本人シェフとしては、ミラノの徳吉、ローマの能田といわれともにミシュラン1つ星を維持するオーナシェフ。今回は期せずしてその能田さんも同席してのランチだった。アナゴのタコス 紺野真
トマトとコリアンダー(チラントロ)、アボガドのディップ&アナゴのワカモレとタコス、ライムというメキシカンな前菜。36ケ月熟成クラテッロ・ディ・ズィベッロ ニョッコ・フリット 徳吉洋二
1階にあるキッチンで黙々と揚げ物をしてい徳吉シェフの料理はこちら。モデナ伝統の味ニョッコ・フリットとクラテッロ。銀座資生堂ファロの加藤峯子パティシエは「オステリア・フランチェスカーナ」時代徳吉シェフの同僚だったが「とにかう洋二さんのニョッコ・フリットは薄くてぱりぱりで美味しいんです」という。確かにシンプルだけど熱々のニョッコ・フリットにクラテッロの脂が溶け出し、なんともいえないコンビネーションのフィンガー・フード。ラディッキオ 鳥の煮こごり 平山秀仁
鶏肉を煮詰めて固めた煮こごりにラディッキオ、バルサミコ、パルミジャーノという日本&モデナ合作の味。平山シェフは山田宏巳シェフの元で研鑽を積んだ後ミラノ「TOKUYOSHI」に勤務、帰国に合わせて2号店「アルテレーゴ」のシェフに就任した。卵サンド 関根拓
パリから参加した関根シェフはふわふわのタマゴサンド。まかないでよく食べていた思い出の味で、しっかりと両面トーストしてあるのがポイント。チキン、紹興酒、モリーユのマカロニグラタン 佐藤秀明
香港で二つ星を維持する佐藤シェフは中華料理風に紹興酒を使った日、仏、伊、中の合作的マカロニ・グラタンを披露。ピスタチオのジェラート Alter Ego
デザートは「アルテレーゴ」スタッフによるイタリア的なピスタチオのジェラート。 徳吉シェフの近年の特徴の一つに活発なコラボレーションがあげられるだろう。日本の感覚からすると、店を空けて(そして閉めて)遠方まで出かけ、他のシェフとコラボするのは容易ではない。しかしミラノを本拠地とする徳吉シェフにしてみれば、イタリア国内はもちろんヨーロッパ各国、さらには他の地域まで料理イベントに招聘され、徳吉料理を披露するのは大事なミッションのひとつである。それは顧客ターゲットがイタリア国内のみでも日本国内だけでもなく、世界が対象だからであり、日本ベースのイタリア料理のシェフとは発想が異なる点だろう。 特に最近ではイタリアのノンナ=おばあちゃんとのコラボ・イベントに積極的に取り組んでいる。これは今年3月にミラノで行われたガストロノミー・イベントIdentità Goloseイデンティタ・ゴローゼで徳吉シェフが登壇した際に発表したが「自分は日本人なので伝統的イタリア料理がDNAにはない。なのでつねにイタリア伝統料理を学ぶ必要があるし、それを学ぶにはおばあちゃん=ノンナが最適。彼女たちの元を訪ねて伝統料理を学び、そうした伝統を後世に伝える作業をしたい」
とコメントした。そうした活動は近々まとめて発表されることになると思うが、意欲的なコラボレーション、昔風にいうならば異種格闘技に挑み続ける徳吉シェフの活動に今後も注目したい。Alter Ego アレテレーゴ 東京都千代田区神田神保町2-2-32 Tel050-5597-5083
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