料理を通してオリーブオイルの奥深さを探求する E*tra Vergine Oleoteca
一般消費者とメーカーとの双方向コミュニケーションという点で、ワイン業界に遅れを取っているオリーブオイル業界。それでも、ENOツーリズムの成功に着目したオリーブオイル生産者が徐々に増えてきており、フラントイオの見学やその場でのテイスティングができる機会は以前よりも確実に多くなっている。とはいえ、生産者を訪ねるのは、交通の便やタイミングなど、まだまだハードルは高い。そんな現状に一石を投じるべく誕生したのが、ウンブリアの「E*tra Vergine Oleoteca」、EVオリーブオイルとオリーブ、ワインを販売し、テイスティング、食事も提供する店だ。 オーナーのモニア・カネスキは建築家で、オリーブオイルのパッケージデザインで賞も獲得した、この業界では知られた人物。ウンブリア商工会議所に登録されたオリーブオイル・テイスターであり、自らの農園「miaITALY」でオリーブオイルも生産している。かねてより、オリーブオイルを通して、ウンブリアの自然をより多くの人に知ってもらいたいと考えていたモニアは、同じくテイスターであるピエルルイジ・チェッカレッリと共に2017年に同店を開業した。 イタリア各地のオリーブオイルをセレクトし、販売する店はフィレンツェの「ラ・ボッテガ・デッロリオ」などの専門店やイータリーもあるが、イータリーでは試飲はできないし、専門店は試飲はできてもオリーブオイルと料理のペアリングをじっくり追求することはできない。この「エクストラ・ヴェルジネ・オレオテカ」は、試飲はもとより、オリーブオイルを使った料理を楽しんでもらうことを主眼としている。さらに、モニアは、自分の農園や、普段は人が立ち入らないアッシジの山で摘んだ野草という、昔から土地で食べられてきた自然の素材を駆使して料理する。その力強い味と香りは、スーパーで売られている野菜などとは比べ物にはならないし、本来イタリア料理とはこういう素材で作られるべきものなのだとあらためて思い知らされる。 たとえば、「ひよこ豆のフムスとハーブ風味の緑ひよこ豆」。フムスは地元産のひよこ豆を発芽させ、香草とスパイスで作ったブロードで茹で、セルピッロ・タイム、サントレッジャ、メントゥッチャ、フィノッキエット、ヴァルディキアナ産の大粒にんにく、レモン、バジリコなどと共にミキサーにかけたもの。豆の旨味と野草の味わいが重なりあい、動物性素材が一切ないのに、複雑かつコクがある。そこに茹でた緑ひよこ豆を添え、さらにノストラーレ・ディ・リガーリ種とモライオーロ種のブレンドEVオイルをかける。オイルが持つアーティチョークや青いトマトを思わせる香りが食欲をそそる。 また、「バッカラのオイル煮、リズィーナ豆のピュレ添え」は、エリクリソ、ローズマリー、セージ、コッコレ・ディ・ジネプロ、セルピッロ・タイム、サントレッジャなどの香草と一緒にバッカラをEVオリーブオイルの中に沈めて蓋をし、低温のオーブンでゆっくり加熱。ピュレは、ヴァルディキアナ産大粒にんにく、カンナーラ産赤玉ねぎ、トレヴィの黒セロリとにんじん、コルフィオリートの赤じゃがいもと共に、リズィーナという小粒の豆を柔らかく茹で、ミキサーにかける。ふっくらと柔らかく煮上がったバッカラと旨味の強いピュレのコンビネーションは、ごくシンプルでありながら、実に満足度が高い。これもまた野生のハーブと、土地伝来の野菜がなせる技だ。 モニアの料理は、本人曰く自己流の家庭料理。確かに難しいテクニックは一切使っていないが、素材の味の引き出し方が非常に上手い。何よりも、この素材あっての味となれば、少々不便な場所にあろうとも訪れる価値は十分にある。ウンブリアの少量生産のワインと共にオリーブオイルと土地の味を堪能する、EVOツーリズムには欠かせない店である。 E*tra Vergine Oleoteca, Via Garibaldi, 9 Spello (PG) tel.0742-651481SAPORITAをもっと見る
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