今年が最後になるのか?Michelin Italia 2020の考察
今年の11月に発表されたミシュラン・イタリア Michelin Italia2020年が65年の歴史にピリオドを打ち、最後になるのではないかとの噂がまことしやかにささやかれている。というのも先週Michelinとトリップアドバイザー TripAdvisorの業務提携が発表されたからだ。前者は言うまでもなく、レストランだけでなくホテルの評価も加えた最も権威と歴史あるガイドブックで、後者はレストランとホテル・レビューからなる世界で最も購読されている口コミサイトだ。業務提携の内容はというと、TripAdvisorとその予約サイト、ザ・フォーク The Fork内でミシュランの星や評価が表示されるというもの。それは2016年にMichelinが買収した予約サイトBooktableの失敗によるところが大きい。 現在の口コミサイトやレストランレビューを中心としたサイトは予約システムと連結したものが多く、そこから収益を得ているケースがほとんどだ。一方Michelinはデジタル化の遅れとサイトの使い勝手の悪さから、本家の紙版は相変わらずの権威を誇っているもののWEBの世界においてはその存在感は薄くなる一方。特に星つきレストランを評価するファインダイニングの世界では「世界ベスト・レストラン50」と連動したFine Dining LoversやOAD TOP RestaurantといったWEBサイトに情報の速さや話題性、そして特にビジュアルの面で圧倒的に遅れをとっている。日本版ではカラー写真が掲載されているが、ヨーロッパ版は相変わらず文字情報のみなのだ。かつてはミシュランをめくって電話をかけるというのが有名レストランを予約する唯一の方法だったが、WEB予約の世界で出遅れたミシュランにとってTripAdvisorとThe Forkというデジタル・パートナーと手を組んだことでもはや本家のガイドブックは役割を終えたのではないだろうか?出版されるとしてもオンデマンドのみで、来年以降はもう発売されないのではないか、それならばTripAdvisorの次はFacebookやAmazonあるいはGoogle、AlibabaとMichelinの提携が始まる可能性も考えられる、とGambero Rossoは予測する。というのも事実Michelin自身がブランド化、そしてコンテンツ化へのシフトを認める発言をしているからだ。 確かにGoogle Mapを開けばMichelinの星つきレストランが表示され、容易に予約がとれるようになれば(たとえオステリア・フランチェスカーナでも!!)ユーザーにとっては実に快適な世界になるだろう。もはやMichelinがガイドブック本体の売り上げだけでは収益が成り立たないことを示すもう一つの指標は表2の広告の存在だ。Michelin Italiaは毎年誌面の冒頭で「評価の独立性」を掲げているが2016年のアルファロメオの広告から一転、なんと車業界からワイン業界へとシフトし2017年以降は現在までヴーヴクリコが広告スポンサーとなっている。2020年Michelin東京版にはエビスビールのロゴが入っているのに気づいた人はいるだろうか?かつて広告皆無、重厚なハードカバーだった時代のMichelinを知る人からすれば時代も変わった、と嘆かせるに十分たるものだ。 それはさておきMichelin Italia 2020に目を向けると今年も新しい3つ星レストランが誕生した。ミラノのMudec(Museo della Cultura=文化博物館)内にあるEnrico Bartolini エンリコ・バルトリーニだ。シェフ、エンリコ・バルトリーニは同時にヴェネツィアにあるGlam Enrico Bartoliniも2つ星昇格を果たし、既存のトスカーナにあるLa Trattoria Enrico Bartolini、ベルガモのCasual、ピエモンテのRelais Sant’Uffizioとあわせて合計なんと8つ星。これはイタリア料理界では誰もなしえなかった快挙であり、当然のことながらイタリアで最も星を多く持つシェフとなった。日本ではほとんど馴染みが無い名前だと思うが、1979年生まれのエンリコ・バルトリーニはロンドン、パリ、ベルリンなどでキャリアを積んだ後Le Calandre レ・カランドレで3年過ごし独立。ちなみにミラノに3つ星をもたらしたのはかのGualtirero Marchesi グアルティエロ・マルケージ以来26年ぶりのこと。エンリコ・バルトリーニには2017年6月、La Trattoria Enrico Bartoliniで会ったがその時はまさか3つ星シェフ、いや8つ星シェフにまでなるとは想像もしていなかった。SAPORITAをもっと見る
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