2019年イタリアで最も稼いでいるシェフは誰だ?
昨年3つ星に昇格したマルケ州を代表するシェフ、マウロ・ウリアッシ Mauro Uliassiは常々こう語っている。「高級レストラン・ビジネスは、昔に比べるととんでもなく難しい。可能性はもちろんある、しかし過大な投資はリスクが大きいし、反応やレビューは必ずしも好意的なものではない」アルタ・リストラツィオーネ Alta Ristorazione=オート・キュイジーヌの世界ではクリエイティヴィティに加え、フードロス、サステイナビリティ、デザイン、ラグジュアリーなど重要なキーワードは多岐に渡り、発酵ブームに伴い未知の素材や新しい味も次々に登場して来ている。そんな現代ではあるが勝者のレストランも確かに存在する。そこで知りたいのは、今イタリアには合計10軒のミシュラン3つ星を筆頭に多くのファイン・ダイニング・レストランが存在するが、最も稼いでいるレストラン、そしてシェフは果たして誰か?ということだ。過日ミラノのフードコンサルティング会社「パンビアンコ Panbianco」が発表した2018年度のトップ・レストランの売上統計を元に考察してみたい。ちなみにミシュランの星を持つイタリアのレストラン(少なくとも一つ星)は平均して対前年比+22.5%という驚異的な伸び率を示している。また、一部のレストランについては年によってデータが無いことも補足しておきたい。あくまでもひとつの目安、として考えていただければ幸いである。ちなみに各数字はシェフの収入ではなく各レストラン(あるいはレストラン・グループ全体)の売上だ。

No.1 マッシミリアーノ・アライモ 1410万ユーロ +5%(17億2020万円) Massimiliano Alajmo (Le Calandre)

数多いトップ・シェフの中で1位に輝いたのはミシュラン史上最年少で3つ星を獲得した「レ・カランドレ」のマッシミリアーノ・アライモ。特に近年ではヴェネツィアの「グラン・カフェ・クアドリ Gran Caffè Quadri」に加え同じヴェネツィアに「アーモ Amo」、パリの「カフェ・シュテルン Caffè Stern」ミラノの「アモール Amor」と新店を次々にオープン。現在は世界中に11店舗を経営している。CEOでもある兄のラッファエーレ・アライモ Raffaele Alajmoとのコンビはイタリア・レストラン最強の兄弟といわれるのも当然の結果だろう。

No.2 カルロ・クラッコ 1300万ユーロ +60%(15億8600万円) Carlo Cracco (Cracco in Galleria)

2017年度に比べ+60%と驚異的な伸び率を示したのはミラノのカルロ・クラッコ。これはひとえにミラノのガッレリア内にオープンした新店「クラッコ・イン・ガッレリア Cracco in Galleria」の存在が大きい。他にも「カルロ・エ・カミッラ Carlo e Camilla」なども経営。TVの世界とは一線を画し、シェフ業に専念したのも大きいか。

No.3 アントニオ・カンナヴァッチュオロ 990万ユーロ 2017年(12億780万円) Antonio Cannavacciuolo (Villa Crespi)

2017年のデータなので暫定3位となるが、オルタ湖にある「ヴィッラ・クレスピ Villa Crespi」のシェフ、アントニオ・カンナヴァッチュオロも売れっ子シェフだ。「ヴィッラ・クレスピ」の他にピエモンテを中心に「ラックア Laqcua」「カンナヴァッチュオロ・カフェ・ビストロ Cannavacciuolo Caffè&Bistrot」「カンナヴァッチュオロ・ビストロ Cannavacciuolo Bistrot」「アントニーノ・イル・バンコ・ディ・カンナヴァッチュオロ Antonino Il Bistrot di Cannavacciuolo」を経営。TVの出演料は含まれていないので、あるいはイタリアで最も稼いでいるシェフはカンナヴァッチュオロか?

No.4  エンリコ・バルトリーニ 900万ユーロ +47%(10億9800万円) Enrico Bartolini ( Enrico Bartolini)

第4位にランクインしたのは11月に3つ星を獲得したばかり、いま最も旬のシェフ、エンリコ・バルトリーニだ。ミラノMudec内にある「エンリコ・バルトリーニ Enrico Bartolini」はじめ「グラム Glam」「トラットリア・エンリコ・バルトリーニ Trattoria Enrico Bartoloni」「カジュアル Casual」「ロカンダ・デル・サント・ウフィツィオ Locanda del Sant’Uffizio」「ポッジョロッソ Poggio Rosso」と合計8つ星を所有。これはもちろんイタリア最多記録だ。来年はさらなる飛躍が現段階でも予想される。

No.5 マッシモ・ボットゥーラ 690万ユーロ 2017年(8億4180万円) Massimo Bottura (Osteria Francescana)

暫定5位はマッシモ・ボットゥーラ。2016年、2018年と2度の「世界ベストレストラン50」で世界一になるなど、世界的な名声を持つ。長らく本家「オステリア・フランチェスカーナ Osteria Francescana」のみだったが姉妹店「フランチェスケッタ58 Franceschetta58」さらには「グッチ・オステリア Gucci Osteria」をフィレンツェとドバイにOPEN。今年は念願のホテル・レストラン「カーサ・マリア・ルイージア Casa Maria Luigia」をオープンしたので、来年はさらに上位を狙えることは確実。

番外 エンリコ・チェレア、ロベルト・チェレア1790万ユーロ 2017年(約21億8380万円) Enrico Cerea, Roberto Cerea (Da Vittorio)

2018年のデータはないが、2017年のデータを考慮するならば、イタリアで最も売り上げが多いレストランは、実はベルガモ近郊ブルサポルトにあるミシュラン3つ星ダ・ヴィットリオだ。エグゼクティヴ・シェフをつとめるチェレア家長男「キッコ」ことエンリコ・チェレアは11月にも来日、1夜限りのガラ・ディナーを終えたばかりだ。ダ・ヴィットリオはキッコや「ボボ」ことロベルトの父、故ヴィットリオが1966年に創業。現在の場所に移転しホテルやテニスコート、プール、ヘリポートなどを備えバンケットや結婚式、イベントも行える大型ホテル・レストランだ。それはヴィットリオがこの世に遺した5人の子供達のチームワークによるところが大きい。スイスのサンモリッツ店についで2019年には上海店をオープン。わずか3ケ月で1つ星を獲得したことから、こちらも来年はさらに売り上げも増えることが予想される。

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