アブルッツォの革新家ジャンニ・マシャレッリ
アブルッツォ・ワインについて語る時、エドアルド・ヴァレンティーニ Edoardo Valentiniについでもう一人忘れてはいけない第二の巨人がジャンニ・マシャレッリ Gianni Masciarelliだ。1500年代からブドウを栽培しワインを作り続ける老舗貴族ヴァレンティーニと違いマシャレッリの創業は1981年と新しい。しかしわずか30数年の間に老舗ワイナリーであるヴァレンティーニ Valentini、エミディオ・ペペ Emidio Pepeと肩を並べ、アブルッツォ・ワインの旗手として世界中に知られるようになったのはひとえにジャンニ・マシャレッリの功績だ。ジャンニ・マシャレッリはキエーティから南へ20kmの位置にあるサン・マルティーノ・スッラ・マッルチーナ San Martino sulla Marrucinaに生まれ、祖父のウンベルトからワイン作りの情熱を受け継いだ。20才の時にシャンパーニュに留学し収穫から醸造までを体験。その経験を地元アブルツォに持ち帰り、1981年に生家のヴィッラ・ジェンマ Villa Gemmaでワイン作りを始める。ジャンニのモットーは「Innovazione continua 確信は続く」つまりつねにたゆみない研究と革新を繰り返し、ワイナリーを成長させてきたのだ。ジャンニはアブルッツォの在来品種=モンテプルチアーノ、トレッビアーノの可能性を信じ、フランスで学んだ核心を持ち込んだ。それはグイヨー(ブドウが房をつける枝(結果母枝)が主幹から2本伸びている剪定方法)とフレンチ・オークのバリックで、アブルッツォでは未だかつて誰も導入していなかった方法だ。ファーストヴィンテージは1983年でトレッビーノとモンテプルチアーノ合計9000本。1984年にはサン・マルティーノの優良畑からのセレクション、ヴィラ・ジェンマ・ロッソ Villa Gemma Rossoをリリース。休みなく革新に向き合うジャンニのワイン作りが本格的にスタートした。ジャンニは2008年、52才の若さでこの世を去ったが後を継いだのはクロアチア出身のジャンニ夫人マリーナ・チヴェティチ。いまは年産250万本にまで成長したが、ジャンニがワイン作りを始めたヴィッラ・ジェンマはいまもワイナリーの正面に佇んでいる。 ワイナリーから、サン・マルティーノ・スッラ・マッルチーナの畑に向かう。ここにあるのは、ジャンニが一人になりたい時に来たと言うペンサトイオ=瞑想室だ。この小さな建物は現在特別なテイスティングや食事会などに使用されており、大きく作られた窓からは眼前にモンテプルチアーノの畑が広がっているのが見える。ジャンニは1987年、当時20才だったマリーナとクロアチアで出会う。マリーナの祖父はクロアチア沿岸部、ダルマツィア地方でワインを作っており小さい頃からマリーナも祖父のワイン作りを見て育ったという。マリーナいわくジャンニと出会った時から「冒険」は始まり、ジャンニを追ってイタリアに渡る。二人三脚でのワイン作りが始まり、ジャンニの死後はマリーナがワイナリーの経営を引き継いだ。現在は「シニョーラ・デル・ヴィーノ・アブルッツォ Signora del vino d’Abruzzo」とも呼ばれ多くの人々から尊敬を集めている。 サン・マルティーノ・スッラ・マッルチーナから移動し、北へ10kmほどにあるカステッロ・ディ・セミヴィーコリ Castello di Semivicoliに向かう。これは17世紀に作られた貴族の館で現在はマシャレッリが所有、ウエディングやバンケット、宿泊施設も備えたワイン・リゾートとして使用されている。高台にあるので窓からはマイエッラ山地やアドリア海まで一望できる。ここでカステッロ・ディ・セミヴィーコリのディレクターであるヴァレンティーナに案内され、アブルッツォ産のサラミやチーズとともにマシャレッリのワイン計19種類を味わった。現在マシャレッリはVilla Gemma, Marina Cvetic, Castello di Semivicoli, Gianni Masciarelli, Linea Classica, La botte di Gianniの6ブランドのワインを生産しており、Villa Gemmaはモンテプルチアーノ・ダブルッツォ、チェラスオーロ・ダブルッツォ、ビアンコ・テラマーネの3種。一方Marina Cveticは1991年が初リリースでモンテプルチアーノ、トレッビアーノの他にカベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、メルロー、シャルドネといったフランス品種100%計7種類。Castello di Semivicoliはトレッビアーノ、ペコリーノ、ロッソIGTテッレ・アクイラーネの3種。そしてGianni Masciarelliはジャンニの死後2014年が初リリース。マリーナがジャンニの名前を冠することを強く望み、モンテプルチアーノ・ダブルッツォ、チェラスオーロ・ダブルッツォ、トレッビアーノ・ダブルッツォと言う伝統的なラインナップ3種類だ。全てのテイスティングについて書くと冗長すぎるでのここでは特に素晴らしかったワインについてだけコメントを。 Trebbiano d’Abruzzo Castello di Semivicoli DOC 2015 キウイ、パパイヤ、マンゴーナなどのトロピカルフルーツ、野の花(タンポポ、ひなぎく)味わいははちみつ(ラベンダー)のようでとても心地よい余韻。 Montepulciano d’Abruzzo Villa Gemma Riserva 2014 陰干しブドウ、凝縮感が素晴らしくブラックベリー、ミルト、リコリス、ダークチョコレート、長期熟成にも耐えうる素晴らしいワイン。 Montepulciano d’Abruzzo Marina Cvetic 2016 赤い花の香り(バラ?ハイビスカス?)、ダークチェリー、パンフォルテ、完熟したタンニン。 Cerasuolo d’Abruzzo Villa Gemma 2018 すぐり、野いちご、梨などの白い果物、エニシダ、心地よいフレッシュな酸と軽いタンニン。 www.masciarelli.itSAPORITAをもっと見る
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