2020年イタリア料理界の動向は?ガンベロロッソを読み解く
2019年末、毎年恒例ガンベロ・ロッソ Gambero Rossoが発行するレストラン・ガイド Ristoranti d’Italia 2020がイタリアで発売になった。これは1990年の創刊以来記念すべき30周年記念号で編集長のラウラ・マントヴァーナ Laura Mantovanaはこの30年でイタリアにおけるレストラン事情がいかに変化したか、を感慨深く切実に語っている。数字的に見てみれば1990年初年度版の掲載店は966軒でミシュラン3つ星に相当するトレ・フォルケッテ(3本フォーク)は10軒。一方2020年度版では掲載2685軒、トレ・フォルケッテ35軒とどちらも3倍ほどにまで拡大しているのだ。 その間イタリア料理界においてはエル・ブリ」に代表される新スペイン料理 Nueva Cocina Espagnolaの台頭とポスト・マルケージとも呼べる沈滞と低迷の90年代、リーマンショック前後の景気後退が如実に現れた2000年代を経て、マルケージの愛弟子たち「マルケジーニ」やボットゥーラ、ニコ・ロミートらが花開いた2010年代を迎えた。そのピークが2016年マッシモ・ボットゥーラが「世界ベストレストラン50」で世界一に輝いた瞬間であり、ガンベロ・ロッソと並ぶレストラン・ガイドの権威であるエスプレッソ誌 Guida Espresso編集長のエンツォ・ヴィッツァリ Enzo Vizzariは「イタリア料理はかつてないほどの成熟期を迎えている」と発言したことも記憶に新しい。 そうした流れを鑑みると、2020年からの10年間で重要なキーワードになってくるのはおそらく「サステイナビリティ」と「アンティ・スプレーコ=フードロス対策」だろう。地元の食材、生産者、伝統を無理のない方法で結びつける「サステイナビリティ」も、クチーナ・ポーヴェラの伝統を再確認する意味でも無駄な食材を出さない配慮をする思想「アンティ・スプレーコ」も、料理の世界のみならず現代社会においてはますます重要になりつつあり、この2つの命題を遵守しないシェフ、レストランは今後自ずと淘汰されていくはずだ。アラカルトは出さず、白紙メニュー「OMAKASE=おまかせ」のみを提案するレストランの姿勢は廃棄食材削減につながり、ひいては無理のないレストラン経営へと至る。内装やテーブルクロスのクリーニング代などのコストを下げ、高級食材は使わないけれど高い料理技術でローコスト・ガストロノミーを実現する「ネオ・トラットリア」あるいは「ネオ・オステリア」は、そうした観点からもこれからの10年間でますます重要さを増してくるはずだ。 ガンベロ・ロッソに話を戻そう。レストランは料理50点、サービス30点、ワイン20点の合計100点満点で採点され(トラットリアに点数はつかない)70点以上に1本、80点以上に2本フォークが与えられ、90点以上の高得点を獲得したレストランには「トレ・フォルケッテ=3本フォークは」が与えられる。2020年度掲載店2685軒中、最高峰となる「トレ・フォルケッテ」は以下の35軒。1位のニコ・ロミート、同率2位のマッシモ・ボットゥーラ、ハインツ・ベック、同率4位のマッシミリアーノ・アライモ、エンリコ・クリッパ、マウロ・ウリアッシはいずれもミシュラン3つ星ホルダーでもある。今後しばらくイタリアのガストロノミー界は彼らを中心に展開していくことは間違いないだろう。

🍴Tre Forchette 2020🍴

96 Reale – Castel di Sangro (AQ) – Niko Romito 95 Osteria Francescana – Modena – Massimo Bottura La Pergola dell’Hotel Rome Cavalieri – Roma Heinz Beck 94 Le Calandre – Rubano (PD) – Max Alajmo Piazza Duomo – Alba (CN) – Enrico Crippa Uliassi – Senigallia (AN)Mauro Uliassi 93 Don Alfonso 1890 – Sant’Agata sui Due Golfi (NA) – Alfonso Iaccarino Enoteca Pinchiorri – Firenze – Riccardo Monco Villa Crespi – Orta San Giulio (NO)Antonino Cannavacciuolo 92 Cracco – MilanoCarlo Cracco Duomo – Ragusa – Ciccio Sultano Madonnina del Pescatore – Senigallia (AN) – Moreno Cedroni Il Pagliaccio – RomaAnthony Genovese Quattro Passi – Massa Lubrense (NA) – Antonio Mellino Seta del Mandarin Oriental Milano – Milano – Antonio Guida St. Hubertus dell’Hotel Rosa Alpina – San Cassiano/Sankt Kassian (BZ) – Norbert Niederkofler Torre del Saracino – Vico Equense (NA) – Gennaro Esposito La Trota – Rivodutri (RI) – Sandro Serva Da Vittorio – Brusaporto (BG) – Famiglia Da Vittorio 91 Enrico Bartolini Mudec Restaurant – Milano – Enrico Bartolini Berton – MilanoAndrea Berton D’O – Cornaredo (Mi)Davide Oldani Pascucci al Porticciolo – Fiumicino (RM) – Gianfranco Pascucci Dal Pescatore – Canneto sull’Oglio (MN) – Nadia Santini Casa Vissani – Baschi (TR) – Gianfranco Vissani 90 Agli Amici dal 1887 – Udine – Emanuele Scarello Da Caino – Montemerano (GR) – Valeria Piccini Taverna Estia – Brusciano (NA) – Francesco Sposito Idylio by Apreda del The Pantheon Iconic Rome Hotel – Roma – Francesco Apreda Laite – Sappada (UD) – Fabrizia Meroi Lido 84 – Gardone Riviera (Brescia) – Riccardo Camanini Lorenzo – Forte dei Marmi (LU) – Gioacchino Pontrelli La Madia – Licata (AG)Pino Cuttaia Miramonti l’Altro – Concesio (BS)Philippe Léveillé La Peca – Lonigo (VI) – Nicola Portinari また、今年は創刊30周年ということでシェフ、サービス合計30人を「30才以下ベスト30」として特別表彰している。ここでは長くなるので全員の名前を記すことはできないが、彼らの中から新しいトレ・フォルケッテが出てくるかどうか?青田買いという意味でもこのリストには注目しておきたい。以下主な各受賞者は以下の通り。既報通り「年間最優秀リストラトーレ Il Ristoratore dell’anno」には「ドゥオモ Duomo」のチッチョ・スルターノ Ciccio Sultanoが輝いた。また「年間最優秀イノヴェーション Premio Innovazione in Cucina」を受賞したモレーノ・チェドローニ Moreno Cedroniは20年前の2000年には再注目若手シェフに与えられる「注目シェフ賞 Cuoco Emergente」を受賞していたことも感慨深い。 また、時期尚早だがこうした一連の動きを見てみると「ドン・アルフォンソ1890」以来誕生していないローマ以南の南イタリアのミシュラン3つ星誕生もそう遠くないことかと思われる。それは「ドゥオモ」のチッチョ・スルターノであり、2019年の積極的な活動やリニューアル、受賞を見ているとあるいは来年こそは???と大いに思わせてくれるのだ。2021年度版ミシュランに期待したい。 Cuoco Emergente 注目シェフ賞 SOLAIKA MARROCCO / Primo Restaurant(LECCE) La Novita dell’anno 年間最優秀ニューオープン Impronta(Bassano del Grappa) Il Ristorantore dell’anno 年間最優秀リストラトーレ Ciccio Sultano, Duomo(Ragusa) Piatto dell’Pesce dell’anno 年間最優秀魚介料理 Pascucci al Porticciolo(Fiumicino,RM) Il Pastry Chef dell’anno 年間最優秀ペイストリーシェフ Edvige Simoncelli, Idylio by Apreda(ROMA) Premio Innovazione in Cucina 年間最優秀イノヴェーション Madonnina del Pescatore(Senigallia) Miglior Proposta della Pasta 年間最優秀パスタ Sud(Quarto,NAPOLI) Miglio Pane in Tavola 年間最優秀パン Il Faro di Capo d’Orso(Maiori,SA) Miglior Proposta al Bicchiere 年間最優秀グラスワイン Il Pagliaccio(ROMA) Miglior Proposta Wine Bar 年間最優秀ワインバー Gran Cru(Milano) Servizio di Sala 年間最優秀サービス Da Vittorio(Brusaporto,BG) Servizio in Albergo 年間最優秀ホテル・サービス Il Piccolo Principe(Viareggio) Miglior Servizio Caffe 年間最優秀コーヒーサービス L’Argine a Venco(Dolegna del Collio,GO) Terra e Ambiente テロワール Al Convento(Cetara,SA) Locanda del Benaco mit Caffe(Salo,BS) Al Vedel(Colorno,PR) Miglior Agri – Ristorante 年間最優秀アグリ・リストランテ Agriturismo Il Casaletto(Viterbo) Valorizzazzione Prodotti Locali 年間最優秀地産地消 Vecchia Marina(Roseto degli Abruzzi,TE)  

SAPORITAをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。