ピッツァ・コンテンポラリーin東京。「ピッツァバーON 38TH」
ラグジュアリーホテルのダイニングでピッツァ。アラカルトやコースの一部でピッツァ的な一品を組み込むことはあっても、ピッツァを主役にするダイニングはイタリアでもあまりない。しかし、考えてみたら、コース料理や贅沢な素材をふんだんに使った料理ばかりでは飽きも来る。軽くカジュアルに楽しみたいという気分に応えるという意味で、ピッツァを選択肢に加えるのは実は合理的だ。しかも、街場のピッツェリアと一線を画したガストロノミックなピッツァとなれば、わざわざ試してみたいと思うお客も出現する。 東京・日本橋のホテル、マンダリンオリエンタル東京の38階にある「ピッツァバーON 38TH」は果たして、イタリアで2000年代以降現在に至るまで席巻しているコンテンポラリー・ピッツァの粋を極めようとする店だ。同じ38階にあるイタリア料理「ケシキ」と空間としては緩やかに繋がっているが、このピッツァバーはわずか8席、フォルノをL字に囲む大理石のカウンターに座ったものだけがピッツァを味わうことができる。生地を成形し、トッピングをあしらい、焼く、仕上げるという一連の手仕事を眺めながら出来立てを味わう、鮨カウンターと同じライブ感を前面に押し出した仕掛けだ。 もちろん、それだけではない。同ホテルのエグゼクティブシェフであるダニエレ・カソンが何度も試作を重ねたピッツァ生地は、加水率80%で水はサンペレグリーノ、粉はムリーノ・マリーノ社製、ムリーノ・クアリア社製の5種を混ぜ、ライ麦粉の割合の多寡で2種類を用意している。どちらも焼く前は非常に軽くやわらなかなマシュマロ状で、焼き上げるとサクッとした軽さとふわりとした儚さが相まった独特のテクスチャーとなる。ダニエレによると現在の生地は1月に完成したレシピで、今後も見直して進化し続けるという。
右はライ麦粉多め、左は少なめの生地。
通常、メニューはアラカルトのみで、「シェフのおすすめ」として生地をフォカッチャ風に焼いて厚みを半分に切り、トリュフ風味のマルカルポーネを挟んだ「ピッツィーノ」と旬の素材を使った「季節のピッツァ」の2種類、「クラシックピッツァ」として、トマトと水牛のモッツァレッラの「ブファラ」、トマトとアンチョビの「ポモドーロ・エ・アリーチ」、5種類のチーズの「チンクエ・フォルマッジ」、トスカーナのサラミまたはスパイシー・ソプレッサータの「ディアヴォラ」、オレガノではなくフレッシュマジョラムを散らした「マリナーラ」、ンドゥヤとチーズなどを包んだ「カルツォーネ」の6種類がある。また、時折り、スペシャルなメニュー・デグスタツィオーネの夕べが催されることもある。例えば今回、ダニエレが組んでくれたのは、以下のとおりだ。 菜の花のグリルのアミューズの後に、15〜20分ほどマリネしたトマトにイタリアから空輸した大きなトレッチャ・ディ・モッツァレッラとEVOのパールをあしらったサラダ。ピッツァビアンカとともに。 マスカルポーネと黒オリーブのパテ、トリュフオイル、あさつき、ペリゴールの黒トリュフを仕上げにたっぷりふりかけた「ピッツィーノ」。 水煮トマトの種と水分を極力取り除いて密度を上げたトマトソースに、透けるほど薄くスライスしたにんにく、マジョラムをふりかけた「マリナーラ」。生地はトマトの味わいを邪魔しないよう、ライ麦粉少なめバージョン。 緑野菜のピュレの上にセリ、ふき、菜の花、ふきのとう、たらの芽、こごみ、茗荷、ディルを細かく刻み、小粒のそら豆とともにトッピングした「山菜のピッツァ」。ライ麦粉多めの生地で山菜の強い香りとバランスをとっている。 焼きたてのピッツァビアンカに、フォルノの余熱で溶かしたドモーリのカカオ70%チョコレート、2種類のイチゴをのせたピッツァ・ドルチェ。 ハインツ・ベックやフォーシーズンズホテルなど、ファインダイニングで技を磨き、経験を積んだダニエレが創造するのは、弾力性と力強さが特徴的なナポリピッツァや、しっかりと水分を飛ばして焼き上げるローマのピッツァとも違う。緻密な計算に基づき、食材の使い方・組み合わせを考え抜いた、繊細でエレガント、そしてイタリアにおけるピッツァの“今”の時代を物語るピッツァである。   ピッツァバー on 38th マンダリン オリエンタル 東京 東京都中央区日本橋室町2-1-1 営業時間 11:30〜15:30(14:30LO) 17:30〜23:30(22:00LO) レストラン総合予約 0120-806-823(9:00〜21:00)  

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