ルカ・ファンティンのショート・メニュー Menu Corto
「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」は現在ミシュラン1つ星、アジア50ベスト第18位など日本のみならず現在のアジアを代表するトップ・イタリア料理店であり、Identità GoloseやGambero Rossoで最優秀レストランに輝くなどイタリア本国での評価は日本国内以上に高い。「カルロ・クラッコ」「ムガリッツ」「ハインツ・ベック」「日本料理龍吟」などでキャリアを積んだトレヴィーゾ出身のルカ・ファンティンも来日以来早くも10年が経ち、若手から重鎮へとそのスタンスも変化しつつある。日本に帰国するたび、ルカとはイベントなどでも顔をあわせ、その料理を口にする機会も多いのだがレストランで食事するのは5年ぶり。来日以来10年、ルカ・ファンティンの現在到達点を味わってみた。 銀座2丁目ブルガリ・タワー脇にある専用エレベーターで9階に向かう。2フロア分吹き抜けになっているレストランフロアは中央通りを見下ろす贅沢なロケーションで、夜ともなれば一層ゴージャスさが増す。3月のランチメニューは「Menu Luca Fantin Corto」5皿からなる短めのルカ・ファンティン・コース。ワゴンとともに食前酒で登場したのはブルガリと同じLVMHグループのシャンパーニュ・メソンであるドンペリニヨン、ルイナール、そしてイタリアからはカ・デル・ボスコのキュベ・プレステージュとコントラットのスプマンテ。カ・デル・ボスコを飲む。

Variazione di asparagi bianchi in zuppetta con crema di uovo e Parmigiano Reggiano ホワイトアスパラガスのスープ 卵黄とパルミジャーノのクレーマ

最初の前菜は季節の白アスパラガスを使った温かいスープ。ポタージュ風アスパラガス・スープの下にはパルミジャーノ、ペコリーノ、卵黄のソースがしのばせてあり、トッピングには低温調理した白アスパラガスのコンフィとアスパラガスのオイル、ディルのオイル。とうもろこしのような甘みのスープにパルミジャーノやペコリーノの塩分がアクセント。カ・デル・ボスコのふくよかな酵母と白アスパラガスがよく合う。

Carpaccio di sawara con cipollotto ed aceto balsamico bianco サワラのカルパッチョ 葉たまねぎとホワイトバルサミコビネガー

二つ目の前菜は旬のサワラのマリネ。葉タマネギのピューレ、ポロネギのソテーなどサワラとネギのみでまとめたシンプルな料理。ホワイトバルサミコの酸味でさっぱりと食べさせてくれる。ワインはOttaviano Lambruschi Vermentino di Ligure “Costa Marina” 2018 13%としっかりしたヴェルメンティーノ。

Spaghetti monograno Felicetti con hamaguri e limone フェリチェッティ モノグラーノ スパゲティ 蛤

イタリアにおいてマンチーニと並ぶクオリティ・パスタ・メーカー「フェリチェッティ」はマンチーニ同様、イタリア本国では星付きレストラン御用達の高級パスタで、ルカ・ファンティンは「フェリチェッティ」を使用している。粉の旨味、かみごたえ、舌触り、スパゲッティを味わうにはシンプルなソースに限るがルカ・ファンティンが選んだのはこれも旬のハマグリ。旨味をスパゲッティに吸わせてクリーム状になるまでマンテカーレし、ジュリエンヌに切ったハマグリもスパゲッティによく馴染む。ワインはVilla Bucci Riserva 2007という枯れた味わいのあるVerdicchio。濃厚なハマグリの旨味にも負けない奥行き。

山菜のリゾット Risotto Sansai

メニュー外で登場したのが季節の山菜を軽くフリットし、リゾットにあわせた山菜のリゾット。こごみやのびるのフリットはシンプルで軽く、リゾットはしっかりと米の歯ごたえを残した北イタリアスタイルでパルミジャーノと鶏のブロードとこちらもシンプル。ワインはナパヴァレーからバリックの効いたNewton Chardonnay 2016。ナパのシャルドネもいいけれど、イタリアワインで選ぶなら白ならAlbana、赤ならValtellina SuperioreやPinot Neroあたりも好相性かと。

Maiale leggermente affumicato con stracotto di cipolla e crema di senape 軽く燻製したチンタセネーゼ 玉葱とマスタード

鹿児島産の黒豚チンタ・セネーゼは柔らかく低温調理し少し薫香をかけてある。つけあわせはモスタルダを思わせる小タマネギのストラコットとマスタード。ここでワインは赤になる。Poggio di Sotto “Brunello di Montalcino” 2013 最近日本の高級イタリア料理店でよく見かけるPoggio di Sottoは2020のガンベロ・ロッソでもTre Bicchieriを獲得。エレガントでは華やかな飲み口だがまだまだ若いか。  

キンカンのコンポートとローズマリーとカモミールのジェラート Cumquat sciroppato e galato di rosmarino e camomilla ティラミス Tiramisu

最初の冷たいダザートはオレンジを粒ごと液体窒素で凍らせたシャーベットとキンカンのコンポート、ローズマリーとカモミールの滑らかなジェラート、ミント。続くティラミスはカカオ・パウダーをかけたマスカルポーネ・クリームとクッキーが別添えになっていてこれをディップしながら食べる。マスカルポーネ・クリームは冷たく冷えているのかと思ったら以外にも室温だった。昨年アジア50ベストでベスト・パティシェに選ばれたファブリツィオ・フィオラーニ Fabrizio Fioraniがいたころはこのティラミスには白トリュフがトッピングされていた。 小菓子を食べているとルカが現れたのでお互いの近況報告。ともに佐賀のアジア50ベスト・アワードに行く予定だったのがキャンセル。このご時世だけにレストランのキャンセルが相次いでいるのはブルガリとて例外ではない。それでも20%減程度というから夜の灯りが消えたような銀座においては大健闘といっていいのではないだろうか。ただしそれは「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」での話でブルガリタワー最上階にある「ラ・テラッツァ ドンペリニヨン ラウンジ」や「プライベートルーム」では大口のパーティなど6月分までキャンセルが続出しているという。新型コロナ禍の影響で銀座から中国人はじめアジア諸国の旅行者が激減したが、本来ならばもっと多くのアジア系旅行者が日本を訪れ、日本のイタリア料理を味わってほしいと常々思っている。和食ももちろんいいけれど、イタリア本国に次ぐレベルの高いイタリア料理が食べられるのは日本であることはアジア50ベストやガンベロ・ロッソの高評価が証明している。まずは3月24日にFacebookとYoutubeでライブ中継される予定のアジア50ベストに注目したい。昨年18位だった「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」がTOP10圏内に入るようなことがあればまた新たな話題となり、コロナ禍がおさまったあとの日本のイタリア料理界復活に向け一筋の光明となることかと。 ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン Bylgari Il Ristorante Luca Fantin www.bulgarihotels.com/ja_JP/tokyo-osaka-restaurants/tokyo/il-ristorante 東京都中央区銀座2-7-12 ブルガリ銀座タワー 9F Tel03-6362-0555 営業時間 12:00〜13:30 L.O. 18:00〜20:00 L.O. 日、月休

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