イレブン・マディソン・パークNYも病院食に取り組む
「イレブン・マディソン・パーク Eleven Madison Park」というレストランを覚えている人はいるだろうか?スイス人シェフ、ダニエル・フム Daniele Humm率いるNYの3つ星レストランで、2017年度世界ベストレストラン50 World’s 50 Best Restaurantsで「オステリア・フランチェスカーナ Osteria Francescana」の二年連続世界一をはばみ世界No.1となったこともある。当時イタリアのメディアは「イレブン・マディソン・パーク 」と「オステリア・フランチェスカーナ」の事業規模を比較し、席数200、従業員200人という前者に比べると後者はともに席数、従業員ともに40。さらにNYとモデナという地理的優劣などについて考察し、基本的に予約をとって訪問しないと投票できないという世界ベストレストラン50の根本的なシステムに触れ、圧倒的不利な立場にありながらも健闘した「オステリア・フランチェスカーナ」を讃えるという判官贔屓的な風潮が目立った時期もあった。
その「イレブン・マディソン・パーク 」もコロナ禍によるNYロックダウン真っ只中にあり、現在閉店中。そんな困難な時期にありながらも、ダニエレ・フムとそのスタッッフたちは最前線でコロナ・ウイルスと闘う医療従事者たちに毎日3000食の料理を無償で提供している。ダニエレは「わたしたち料理人ができるのは料理すること。いまはこれしか思いつかない」というが、厨房の全スタッフはマスクと手袋姿で日々15時間、病院のために料理を作り続けているという。NY最高のレストランもいまは野戦病院の一部と化しているのだ。また、慈善団体Rethink Foodも彼らの活動を支えNY中のスーパーマーケットなどから集めた廃棄対象食材を無償提供している。
「イレブン・マディソン・パーク」が病院のためにこれまで用意したのは「牛頬肉のブラザート、ライスとブロッコリ」「パスタ・アッラ・ボロニェーゼ」「鳥もも肉のクスクス」「フォカッチャ」などなど全て前日に仕込んでパッケージング。全て翌日には病院に届くように準備し、医療従事者を料理で支える活動を日々続けている。
また、イタリアにおいても「クラッコ Cracco」のカルロ・クラッコ Carlo Craccoや「ダ・ヴィットリオ Da Vittorio」のエンリコ・チェレア Enrico Cereaとロベルト・チェレア Roberto Cerea兄弟がコロナ被害が最も深刻なミラノとベルガモにおいて同様の活動を続け、彼らの場合は医療従事者だけでなく感染者にも食事を提供しているし、イタリアと国境を接したフランスのマントンにある現在世界ベストレストラン50第一位「ミラズール Mirazul」のマウロ・コーラグレコ Mauro Colagrecoも同様、週2回マントンのラ・パルモサ病院で料理を提供している。
日本も東京、大阪はじめ7都府県に緊急事態宣言が出され、飲食店を巡る状況はますます厳しくなる一方だが料理を作るとは果たしてどんな意味があるのか?店も従業員ももちろん大事だが、世界の料理人たちはそれだけにとどまらない活動でコロナと闘っている。日本でも料理人としての存在意義を問われる状況は、まさにいまなのではないだろうか。
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