南米ベスト・シェフ、ヴィルヒリオ・マルティネスからの手紙
現在日本はもちろん欧米を中心に吹き荒れている新型コロナ・ウイルス旋風は、地球の反対側にある南米でも深刻である。2018年ミラノで出会い「いつか必ずペルーに来い」と約束を交わした「セントラル Central」シェフ、ヴィルヒリオ・マルティネスも例外ではない。世界50ベストレストラン2019年度第5位、ラテン・アメリカ最優秀レストランに選ばれたこともある、南米を代表するシェフから届いたメッセージは母国政府と同朋を信じる前向きで、力強いものだった。 「わたしたちの国ペルーでもすでにロックダウンが発令されてから丸3週間になります。ペルーは南米で最も早く検疫強化に乗り出した国で、これに関しては政府もとてもよくやっていると思います。ペルーの人々は、状況が把握できていればそれで満足するものなのです。リマでは自宅待機要請の手紙が住民全員に届きました。それからわずか8時間後に検疫強化が始まるとのことだったので、わたしたしもすぐにやるべきことにとりかかりました。幸いにもわたしたちはレストラン「セントラル Central」「キョレ Kjolle」「マヨ Mayo」の近くに住んでいるので、妻のピア(レオン・マルティネス)とともにすぐ決断することができました。 レストランの近所は無人で誰もいません。配達もないので仕事をすることはできません。開いている店は薬局は食料品店のみです。ピアとわたしはこの時間を使ってレストランで先送りにしていた用事に取り組み始めたのですが、するとなんと多くのことを先送りにしてきたことかようやく気づきました。わたしたちのレストランは80%が外国からのゲストです。レストランが再開する時にはどうすれば地元のゲストに喜んでもらえるか?新しいアイディアについて考える時間も必要でした。 まだ幼い息子クリストーバルと過ごす時間は特別なものです。誰にとってもこの状況は最悪なものですが、以前はできなかった家族とともに過ごすよい機会だと思っています。前よりも家族とたくさん話せるようになりましたし、朝のニュースを見て父と毎日話し合い、母や友人たちとも話します。これは自分自身を見つめ直すのに必要な時間なのです。 また、わたしたちはMater Iniciativa研究所と、クスコのレストラン兼農場Milにも投資しています。ここでは、わたしたちがレストランで使う量の半分に相当する穀物やキノア、野菜、160種類のジャガイモなどの地下茎を栽培しています。通常、こうした作物は地元の農家と折半するのですが、現状を鑑み、今年の5月の収穫では農家に95%を譲ることにしました。残りの5%は、種子の研究のために保管します。
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